金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年3月28日

呼吸器感染症(肺炎)とグラム染色:肺炎球菌、ノカルジア

 
呼吸器感染症(グラム染色)


医学生の時に、細菌のグラム染色は必ず実習を行いますが、臨床の場で自ら行っている人は少ないようです。実際、多くの場合、グラム染色を行わなくても、治療はうまくいきます。

その一方で、
最近になって感染症治療の分野で新しい波がやってきていて、グラム染色が、熱意をもって感染症に対応しているかどうかの象徴のように扱われるような風潮も最近感じます。あまり、グラム染色だけを特別視するつもりはないのですが、確かにグラム染色を行うことか有用だったと感じることも多々あります。最近印象的だった症例を紹介したいと思います。

 

1例目は80代の男性です。

数日前から全身倦怠と咳、痰があり、近医を受診したところ、微熱と右肺の肺炎像が指摘されました。別の病気で当院にかかっていたため、金沢大学附属病院呼吸器内科に紹介となりました。胸部写真では、右上肺と下肺に肺炎像を認めました。

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血液検査を行ったところ、白血球は5500/μlと正常範囲でしたが、CRPは31.5 mg/dLと高値でした。

尿中肺炎球菌抗原尿中レジオネラ抗原マイコプラズマIgM抗体陰性でした。酸素飽和度の低下もあり、すぐに入院となりましたが、これらの結果だけだったら、どのような治療を行うべきでしょうか。

可能性はいろいろかとは思いますが、目の前で痰を出してもらったところ、褐色調の膿性痰が得られ、グラム染色グラム陽性双球菌が見られました。
 
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これを見て、肺炎球菌感染に違いないと判断し、抗生剤治療を開始しました。

3日後に痰培養で肺炎球菌が検出され、同日の尿中肺炎球菌抗原は陽性になっていました。そして、その結果が得られたころには、治療により肺炎は軽快にむかっていました。

高齢者の肺炎では必ずしも高熱が出たり、白血球が増えたりしないことがあること、尿中抗原検査は発病早期には陽性にならないことなど、教科書などに書かれてはいるけれど、普段忘れがちなことが思い起こされた症例でした。




2例目は60代の男性です。

自己免疫性疾患でステロイドなどの治療が行われている方です。1ヶ月ぐらい前から咳、痰、倦怠感などがあり、感冒剤などを内服していましたが改善しませんでした。微熱、食欲不振が強くなり、通院している外来を受診したところ、右下肺に肺炎像を認め、採血で白血球の増加、CRP11.0 mg/dLなどの所見から、金沢大学附属病院呼吸器内科に紹介となりました。

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比較的ゆっくり進行し、胸部CTを見ると結節様の陰影を認め、通常の肺炎とは異なる印象でした。喀痰のグラム染色を行ったところ、線維状の形態をとるグラム陽性の桿菌を認めました。

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ノカルジアを疑いましたが、口腔内での汚染の可能性も考えられたので、気管支鏡を行って病変部からも同様の菌を確認しました。

なお、入院時に行った喀痰培養の結果は、正常細菌叢であり、グラム染色を行わない限り診断できなかったか、かなり対応が遅れたと思われます。
 
このように喀痰グラム染色は、しばしば臨床に有用な情報を与えてくれます。慣れれば、検体を染色し、顕微鏡をのぞくまで5分程度で済みますし、治療にもかなり自信を持って望むことが出来るは事実です。

 

当科では、感染症の専門グループはありませんが、感染症に興味を持っている者は多く、グラム染色も研究室内で、自分達で染色、観察ができるようになっています。

 


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:37 | 医学全般 | コメント(0) | トラックバック(0)

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