2008年08月12日
ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)発症の本当の訳は?
エコノミークラス症候群というのは、たとえば、長時間のフライト中に深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)をきたす病気です。 長時間のフライトでは、下肢の筋肉を使わないため、筋肉ポンプが働かずに、血液がよどみやすくなります。血液は滞留状態では凝固しやすくなり、血栓が形成されます。これが下肢の深部静脈などにできる病気を、 深部静脈血栓症と言います。
もし、深部静脈血栓症の一部がはがれて、血流に乗って肺の動脈につまってしまいますと肺塞栓と言います。肺塞栓は致命症になりうる怖い病気です。
エコノミークラスというのは、飛行機のエコノミークラス席は特に狭くて下肢を動かしにくく、より血栓ができやすいという考えから命名されたのですが、実はファーストクラスに乗っても深部静脈血栓症を発症することがあります。
そういう意味では、エコノミークラス症候群というのはあまり適切な表現ではないということで、ロングフライト血栓症と言うこともあります。
このように、エコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症)は、飛行機中であまり下肢を動かせないことが発症の大きな理由と考えられてきたのですが、実は、他にも大きな理由があることが近年明らかになりました。
実は、興味深い研究報告があります。下記の3群に分類して、どの程度、血栓ができやすい体質になっているかを、血液検査で調べた研究結果が報告されています。
1)長時間にわたるフライト
2)長時間にわたる映画観賞
3)通常の生活
もし、下肢を動かさないことだけが、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症、肺塞栓)の原因であれば、1)と2)は同じ結果になるはずです。
しかし、結果は、1)では血栓のできやすい病態になりましたが、2)ではそのような病態への移行は観察されませんでした。下肢を動かさないことだけが、エコノミークラス症候群の原因ではなさそうです。どうも、飛行中の低圧性低酸素血症も、エコノミークラス症候群の原因のようです。下記のリンクでその研究結果の要旨をご覧いただけます(Lancetでの報告です)。
参考文献
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・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:25| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)