血栓性素因の診断:臨床検査からみた血栓症(11)
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【血栓性素因の診断】臨床検査からみた血栓症
先天性血栓性素因と診断するためには、何回か繰り返し測定して、後天性の要因の検索を十分におこなうことが必要です。
後天性血栓性のなかでも、最も高頻度にみられる後天性血栓性素因である抗リン脂質抗体症候群(APS)の有無には、常に注意が必要です。
先天性血栓性素因である先天性プロテインC&プロテインS欠損症においては、これらの凝固阻止因子が低下しますが、既にワルファリンが投与がされている場合は、診断に苦慮します(プロテインC&プロテインSはビタミンK依存性凝固因子ですので、ワルファリンの内服によっても血中活性が低下してしまいます)。
ただし、今後このような状況下でも先天性血栓性素因の診断を適確に行うことができるような検査法の開発が望まれます。
先天性血栓性素因を強く疑った場合には、可能なかぎり遺伝子解析を行い、診断を確定するのが望ましいです。
しかし、遺伝性疾患であるため患者一人の検査結果がその家族に波及することになります。慎重な対応と同時にカウンセリングなども必要となります。
一方で、家系内調査の最大のメリットは、同変異を有する保因者を検索し、血栓症を起こし易い状況を避けるような生活指導をおこなったり、血栓予防の対策を事前に講じることができる点があります。
現時点では遺伝子解析を行う施設は限られていますので(参考:先天性血栓性素因)、今後、PS Lys196Gluのような日本人の血栓症の危険因子として確立されかつ頻度の高い数種類の変異を、同時に検出できる簡易キットが開発されることを期待したいと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:39| 血栓性疾患 | コメント(0)