腎障害例に対する抗がん剤治療の方法
CKD(慢性腎臓病)重症度分類 から続く。
腎障害のある患者に対する抗がん剤治療の方法
各薬剤に応じて、用量調整か変更を行います。
抗がん剤の用量調整には、以下の3つの方法があります。
1) 投与間隔を変えず、1回投与量を減らす。
2) 1回投与量を変えず、投与間隔を空ける。
3) 1回投与量を減らし、投与間隔も空ける。
抗がん剤の種類と腎機能により、用量調整の方法が決まります。
ただし、全ての抗がん剤で用量調整法が確立しているわけではありません。
Kitzelらは、腎機能障害患者における腎排泄または腎毒性を有する抗がん剤の用量調整に関するガイドラインを作成して、活性代謝体も含め腎排泄率30%以上の薬剤か、腎毒性を有する薬剤を使用する場合は、用量調整を考慮すべきと提案しました。
Kintzel PE, Dorr RT. Anticancer drug renal toxicity and elimination: dosing guidelines for altered renal function. Cancer Treat Rev. 1995 Jan;21(1):33-64.
この考えは、現在でも変わりません。
実際の用量調整には、国際老年腫瘍学会ガイドラインが参考になります。
Lichtman SM, Wildiers H, Launay-Vacher V, Steer C, Chatelut E, Aapro M. International Society of Geriatric Oncology (SIOG) recommendations for the adjustment of dosing in elderly cancer patients with renal insufficiency. Eur J Cancer. 2007 Jan;43(1):14-34.
個別の薬剤情報に関しては、薬剤を販売している製薬会社へ照会するようにつとめます。
臨床医の経験も重要な要因ですので、使用経験の多い医師へ相談するのもよいです。
抗がん剤治療後は十分な補液(ただし心不全に注意)とアロプリノール投与を行い(ただし腫瘍量の少ない患者では不要)、腎障害のさらなる悪化や腫瘍崩壊症候群が起こらないように注意します。
尿アルカリ化の効果は、現在では否定的です。もし腫瘍崩壊症候群が起こった場合は、米国臨床腫瘍学会のガイドラインを参考に対応します。
Coiffier B, Altman A, Pui CH, Younes A, Cairo MS. Guidelines for the management of pediatric and adult tumor lysis syndrome: an evidence-based review. J Clin Oncol. 2008 Jun 1;26(16):2767-78.
(続く)
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25| 血液疾患(汎血球減少、移植他)