自家造血幹細胞移植とは:造血幹細胞移植入門(5)
造血幹細胞移植入門:自家造血幹細胞移植とは
以前は自家骨髄移植も行われていましたが、最近は患者への負担軽減を考慮(患者に全身麻酔をかけ、移植するための骨髄を採取する必要があります)し、自家末梢血幹細胞移植が中心です。
ただし、急性骨髄性白血病第1寛解期に対する自家移植では、末梢血幹細胞移植より骨髄移植は再発率が低いという報告が最近あり、自家骨髄移植を見直す動きもあります。
Gorin N-C, Labopin M, Blaise D, et al. Higher Incidence of Relapse With Peripheral Blood Rather Than Marrow As a Source of Stem Cells in Adults With Acute Myelocytic Leukemia Autografted During the First Remission. J Clin Oncol. 2009;27:3987-3993.
自家さい帯血移植はほとんど行われません。
自家移植では、患者はがんや血液細胞を壊し尽くすため、抗がん剤治療や放射線治療による移植前処置を受けます。
移植前処置でがんが無くなると同時に、正常な血液細胞も枯渇します。
それに備えるため、前処置に先立ち(通常は1〜3か月前)、あらかじめ患者自身の造血幹細胞を含む血液を凍結保存しておきます。
移植前処置終了後、凍結保存していた患者の血液を解凍して輸注します。
これが「自家造血幹細胞移植」です。
輸血した造血幹細胞が生着しますと、白血球や赤血球、血小板を再び作り始めます。
同種造血幹細胞移植と異なり、患者自身の血液を移植するため、移植後の免疫抑制療法は不要です。
ただし、造血幹細胞を採取する際、移植片に患者のがん細胞が混ざり、移植時に戻された腫瘍細胞が原因で再発が起こる恐れがあります(造血幹細胞移植法の比較)。前処置で全滅しなかった腫瘍細胞も再発の原因になり得ますが、遺伝子マーキング研究の結果、再発は主に前者の機序で起こることがわかっています。
最近、これを裏付ける報告として、自家移植後輸注幹細胞数が多いほど再発率が高まることが明らかとなりました。
Gorin NC, Labopin M, Reiffers J, et al. Higher incidence of relapse for acute myelocytic leukemia patients infused with higher doses of CD34+ cells from leukapheresis products autografted during the first remission. Blood. 2010:blood-2009-2011-252197.
自家造血幹細胞移植後は、同種造血幹細胞移植のようなGVHDや、その予防・治療に伴う免疫不全状態になりにくいので、感染症や臓器毒性による死亡は少ないです(5%未満)。
CIBMTR. Data Resources. http://wwwcibmtrorg/. 2010.
反面、腫瘍に対する免疫学的効果は期待できません。死亡原因は圧倒的に再発が多く、死亡原因の3/4を占めます(造血幹細胞移植後の死因)。
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【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53| 血液疾患(汎血球減少、移植他)