金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年12月07日

同種造血幹細胞移植とは:造血幹細胞移植入門(8)

 
造血幹細胞移植入門(インデックス)
 

造血幹細胞移植入門:同種造血幹細胞移植とは

同種造血幹細胞移植を安全に行うために、通常はなるべく患者とHLAが一致したドナーから血液の提供を受けます。

患者と血液型が異なるドナーからの造血幹細胞移植は差し支えありませんが、赤血球の回復が遅れるなどの問題が生じやすいです。

患者に兄弟姉妹(= 同胞)が1人いると、患者とHLAが一致している確率は約25%です。

2人いると約44%、3人いると約58%の確率で、患者とHLAが一致する同胞が少なくとも1人は見つかる計算になります。

親子間でHLAが一致する確率は1%程度と考えられています。


血がつながっている人(血縁者)の中にドナーが見つからない場合、血がつながっていない人(非血縁者)の中からドナーを探すことになります(図:次回の記事で)。

なお、未成年をドナー候補者とする場合は注意が必要です。



血縁者をドナーとする造血幹細胞移植は「血縁者間同種造血幹細胞移植」、非血縁ドナーからの移植は「非血縁者間同種造血幹細胞移植」と呼ばれています。

国内で非血縁者ドナーを探す場合、日本骨髄バンク(日本骨髄移植推進財団)http://www.jmdp.or.jp/と日本さい帯血バンクネットワーク http://www.j-cord.gr.jp/を利用します。

利用方法や登録方法は、ウェブページに詳しく書かれています。

国内に適切なドナーがみつからない場合、海外のバンクから探すこともあります。



2010年6月現在、国内で実施される非血縁者間同種造血幹細胞移植は、原則として骨髄移植か、さい帯血移植に限られますが、2010年10月以降は非血縁者間末梢血幹細胞移植も開始される予定です。

海外の非血縁者間移植は、末梢血幹細胞移植が主流です。

患者とドナーのHLAが完全に一致していなくても、ある程度適合していれば、同種造血幹細胞移植の実施は可能です。

ただし、生着不全や重いGVHDが増える可能性があります。

また、同じHLA一致ドナーからの移植でも、一般に、非血縁者より同胞からの移植の方が移植の成功率は高くなります。

同種造血幹細胞移植後の死亡原因は、GVHD・感染症・現疾患の再発か増悪が多いです。

HLA一致同胞間造血幹細胞移植でも、一卵性双生児をドナーとする同系造血幹細胞移植では、GVHDが起こらないかわりに再発の可能性が高くなります。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24| 血液疾患(汎血球減少、移植他)