金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年04月23日

高血圧症の線溶能とオルメサルタン(オルメテック)

ARBに属する降圧剤オルメサルタンの、線溶能に対する影響を評価した論文を紹介させていただきます。

ARBは降圧作用のみならず、いろいろな効果が知られていますが、今回は線溶に対する影響が評価されています。

PAI-1とTMが測定されていますが、その他にも種々のマーカーを加えれば、さらに発展性のある仕事になるのではないかと思います。

 

 
「高血圧症例の線溶能に対するオルメサルタンの効果

著者名:Bulur S, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 22: 29−33, 2011.


<論文の要旨>

本態性高血圧症例では、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor-1:PAI-1)の血中濃度が上昇しており、また血管内皮障害のマーカーである可溶性トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の血中濃度が上昇しています。

また、その他のデータからも本態性高血圧では血栓形成が生じやすい過凝固状態にあることが明らかになっています。

Olmesartan medoxomil (OLM)(商品名:オルメテック)は、多くの病態動物モデルやヒトで、内皮機能の障害を抑制したり回復することが報告されています。

しかし、OLMが線溶能に及ぼす影響はまだ十分研究されていません。

著者らは、高血圧症例における血中PAI-1およびTM濃度変化を測定し、OLMの止血・線溶状態に対する効果を検討しました。


対象は、未治療の本態性高血圧患者42名(年齢48±8歳;男性25名)です。非投与の対照は設けずに、全員にOLMを6ヶ月間投与しました。

OLMは20mg/dayから開始し、適宜増量した結果、試験を通じた平均投与量は32mg/dayでした。

また、9名についてはOLMに追加してhydrochlorothiazideが併用されました。

投与6ヶ月の前後に血中PAI-1、TM濃度を測定しました。

 

その結果、血圧は有意に低下しました(収縮期血圧は159.5 ± 10.9から134.6 ± 12.7 mmHg;拡張期血圧は98.0 ± 6.3から83.9 ± 7.0 mmHgに低下)。

血漿中PAI-1およびTM濃度は、それぞれ有意に低下しました。

PAI:59.73 ± 41.91   →   48.60 ± 33.65 ng/mL(P = 0.001)

TM:8.09 ± 2.29   →   6.92 ± 1.42μg/L(P < 0.001)


以上、OLMの6ヶ月間投与により、本態性高血圧患者の血漿中PAI-1およびTM濃度は低下し、線溶抑制状態(および血管内皮障害)が是正されるものと考えられました。

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12| 血栓性疾患