キノコの山をめぐる冒険(4)ドクターBJ
キノコの山をめぐる冒険(3)慢性咳嗽より続く。
「キノコの山をめぐる冒険(広州編)」(4) by 小川晴彦
その晩、Welcome dinnerは、会場からはなれた、高層ビル最上階で開催された。
眼下に広がる夜景のなかに、広州タワーが光を放っている。
突然のスモークと照明に目がくらんだ。
おおーっというどよめきのなかに、会場の天井が、大きく左右にわかれて収納されていくと、瞬く間にオープンエアーのフロアーに様変わりし、宴は最高の盛り上がりをみせた。
「おーい、BJ! こっちだ。 集合写真だ。 早く。」
Prof Nanshan Zhongが、ひときわ大きな声で私を呼ぶと、みなが、“BJ、BJ”といって手招きした。
どうやら、ぼくのニックネームは BJに決まったらしい。
「今日は本当にありがとう。
会場からのすごい熱気は、きみがうまく通訳してくれたからだね」
彼女が微笑んだ。
「this way こっちよ」
彼女が指さしたのは、みんなを待つバスの方向だった。
そしてそれが、彼女とかわした最後の言葉になった。
これでもかといわんばかりに、両手にお土産をもたされて、修学旅行のような、にぎやかなバスは静かにドンファンホテルへと動き出した。
翌日、すべてのプログラムが終了し、一般演題の優秀賞の授与が終わると、それに続いて、講演を行ったメンバー全員が壇上へと招かれた。
安堵と充実感、そして連帯感。
この仕事をやってきてよかった。
ここに来られて本当によかった。
何度も喜びをかみしめ、感謝の気持ちに満ちあふれた。
* 2013.11.10.広州空港。
午前9:15 成田行きANA933便が離陸した。
キノコの山をめぐる冒険 広州編が、もうすぐ幕をとじる。
初めての中国。
初めての国際学会での招請講演。
大きく一息ついた。
そして、淡い面影が薄らいでゆくころ シートベルト着用サインが消え、ぼくは浅い眠りにおちた。
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<リンク>:臨床に直結する血栓止血学
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| その他