金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年08月23日

悪性腫瘍(癌)と血栓症(4)表在性血栓性静脈炎

悪性腫瘍(癌)と血栓症(3)癌の種類とVTE より続く


悪性腫瘍(癌)と血栓症(4)
表在性血栓性静脈炎


表在性血栓性静脈炎(superficial thrombophlebitis)あるいは別称として表在性静脈血栓症(Superficial vein thrombosis: SVT)は頻度の高い疾患ですが、良性で放置しても支障ない疾患と思われてきたために、発症頻度を検討したものはありません。

ただし、近年DVTとSVTの関連を論じる(SVTを有するとDVTも発症しやすいとする)報告もみられるようになり、SVTの見方が変ってきています。

Decousus H, et al. Superficial venous thrombosis and venous thromboembolism: a large, prospective epidemiologic study. Ann Intern Med. 2010; 152: 218-24.

van Langevelde K, et al. Increased risk of venous thrombosis in persons with clinically diagnosed superficial vein thrombosis: results from the MEGA study. Blood. 2011; 118: 4239-41.



SVTとDVTの危険因子には共通したものもあり、SVTも癌と関連あると考えるのは理に叶っています。

ただし、担癌患者におけるSVT発症頻度を検討した報告はなく、逆にSVTが癌発見の契機になるかどうかも一定の見解がありません。

SVT患者737例(DVT合併例は除外)をコントロール患者1,438例と比較した検討では、26ヶ月の追跡期間中、癌診断には有意差はみられませんでした。

Prandoni P, et al. The risk of subsequent cancer and arterial cardiovascular events in patients with superficial vein thrombosis in the legs. Blood. 2011; 118: 4719-22.

一方で、SVTを有する患者では癌診断が多くなるという報告もありますが、この報告ではDVT合併患者が除外されていなかったためかも知れません。

Sørensen HT, et al. Superficial and deep venous thrombosis, pulmonary embolism and subsequent risk of cancer. Eur J Cancer. 2012; 48: 586-93.


SVTと癌の関連を検討する場合には、DVTの合併の有無に留意する必要があると考えられます。

(続く)



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参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 血栓性疾患