悪性腫瘍(癌)と血栓症(15)MPNにおける血栓性対策
悪性腫瘍(癌)と血栓症(14)MPNの血栓症危険因子より続く
悪性腫瘍(癌)と血栓症(15)MPNにおける血栓性対策
PVにおいては、瀉血はヘマトクリットをコントロールするための適した治療法です。
ヘマトクリット<45%を維持することで優れた効果が発揮されています。
Marchioli R, et al; CYTOPV Collaborative Group. Cardiovascular events and intensity of treatment in polycythemia vera. N Engl J Med. 2013; 368: 22-33.
PVに対する少量アスピリン(100mg/日)は、有効性と安全性の両面で検証されています(次回記事の表)。
Landolfi R, t al. Efficacy and safety of low-dose aspirin in polycythemia vera. N Engl J Med. 2004; 350: 114-24.
ETに対しては、アスピリンの血栓症に対する有効性を検証した臨床試験は存在しません。
ただし、少量アスピリン(100mg/日)は、微小循環障害に起因する先端紅痛症、視力障害、末梢性知覚障害には有効です。
また、低リスクET患者を対象とした後方視的検討では、抗血小板療法はJAK2遺伝子変異を有した患者に限定して静脈血栓症を減少させて、心血管危険因子を有した患者の動脈血栓症を減少させるという報告がみられます。
Alvarez-Larran A, et al. Observation versus antiplatelet therapy as primary prophylaxis for thrombosis in low-risk essential thrombocythemia. Blood. 2010; 116: 1205-10.
ET患者では、血小板中のサイクロオキシゲナーゼ-1の再生が早まっているために、アスピリン1日1回の投与では不十分であるという考えがあり、例えば1日2回の投与法も検討されて良いのかもしれません。
Pascale S, et al. Aspirininsensitive thromboxane biosynthesis in essential thrombocythemia is explained by accelerated renewal of the drug target. Blood. 2012; 119: 3595-603.
Tefferi A, et al. Personalized management of essential thrombocythemia-application of recent evidence to clinical practice. Leukemia. 2013; 27: 1617-20.
HUは血球を低下させることで血栓症発症を抑制することを期待して、高リスクのPVやETで用いられることがあります。
HUには白血病化の懸念はないとされてはいるものの、40歳未満など若年者での投与は慎重であるべきでしょう。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 血栓性疾患