金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2016年02月22日

超高齢社会を見据えた未来医療予想図(6)老いて行く道

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報からです。
今回は、特別講演です。

飯島勝矢先生 特別講演
(金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会:平成27年6月21日)


超高齢社会を見据えた未来医療予想図(6)

〜フレイル予防からケアまでを俯瞰した地域包括ケアシステム構築〜」

<どうやって老いて行くのか:男女別>
我々はどうやって老いて行くのでしょうか。

6千人の高齢者を対象にした調査があります。

6千人いれば6千通りの病気の発症の仕方があり、6千通りのADLの落ち方があります。
1)早くストンとADLが落ちたのか、
2)徐々にADLが落ちたのか、
3)なかなかADLが落ちないのか、

という大まかな見方をします。

そうしますと、男性は3つの集団に分かれるのですが、女性は2つの集団に分かれます。

まず男性ですが、男性の19%はメタボベースでの心血管イベントでガクッとADLがおちるパターンです。

このパターンは男性では19%でしたが、女性は12%でした。

男性の70%はそこまでの劇的なイベントは起こらないで、ゆっくり70歳過ぎから虚弱いわゆるフレイルになっていきます。

男性の10%は年齢の割には妙に元気ですねという方がいらっしゃいます。


一方、女性はガクッとADLが落ちるのが12%、そして70歳過ぎてからゆっくりの斜め下り勾配の方が約90%(89%〜88%)で、ADLが落ちない方(男性の10%相当の方)がいないというデータが出ました。

とは言っても、僕自身の外来でも80歳くらいでちょっと小太りのおばぁちゃんで、「旦那も15年前に死にましたけども、それから謳歌してますよ、私」と言っているおばあちゃんもいるのも事実です。

個々にはいらっしゃるのですが、マスとしてみるとあまりいません。

その1つの理由が、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(ロコモ)で、これは女性に圧倒的に多いです。

たとえばO脚、変形性の膝関節症で完全O脚になって杖をついて、のっしのっしと左右で揺れながらって言う方は基本的に女性であると思われます。

女性は、足腰から落ちて行くという側面が非常に強いという風に言われています。


<大部分はフレイリティー(虚弱)パターン>

ADLがガクッと直下型フローで落ちるのは、男性では19%、女性では12%です。

これは脳卒中だけではなくて、膵臓がんなども含まれます。


一方でゆっくりと落ちるパターンの方もおられます。

当然我々専門職は両方の方々に対してのサポートが必要になりますが、後者の方がマジョリティーです。


今日例えば100人お集りならば、当然いろんな病気をおこして我々は徐々に老いて行く訳ですけれど、100人中70〜80人は徐々にフレイリティー、虚弱となるパターンに入いると思います。

今日の夜脳卒中を起こして右半身麻痺になればちょっと話が別ですけど、大半の方は前虚弱状態、プレフレイルの状態を経て行きますので、グラディエーションとなっております。


(続く)

★ 本稿は、東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生のご講演をを拝聴した事務局が原稿化したものです。もし内容に不正確な部分があった場合には当事務局の責任ですので、ご容赦お願いします。


<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01| その他