金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年9月4日

悪性腫瘍(癌)と血栓症(14)MPNの血栓症危険因子

悪性腫瘍(癌)と血栓症(13)MPNにおける血栓性病態より続く

悪性腫瘍(癌)と血栓症(14)MPNの血栓症危険因子

骨髄増殖性腫瘍(MPN)における血栓性の危険因子として、高齢と血栓症既往は重要です。

PV患者における心血管合併症は65歳を超える場合には5.0%、血栓症既往者4.93%であるのに対して、血栓症既往のない65歳以下の患者では2.5%でした。

Marchioli R, et al. Vascular and neoplastic risk in a large cohort of patients with polycythemia vera. J Clin Oncol. 2005; 23: 2224-32.

また、ET患者においても、血栓症発症のハザード比は、60歳を越える場合と血栓症既往がある場合では、それぞれ1.5、1.93でした。

Carobbio A, et al. Risk factors for arterial and venous thrombosis in WHO-defined essential thrombocythemia: an international study of 891 patients. Blood. 2011; 117: 5857-59.

PV患者では赤血球数の増加が血液粘度の上昇につながり、心血管疾患の原因となります。

ヘマトクリットを瀉血やHU治療により45%未満にコントロールした場合には、心血管疾患による死亡率や血栓症が有意に少なくなると報告されています。

Marchioli R, et al; CYTOPV Collaborative Group. Cardiovascular events and intensity of treatment in polycythemia vera. N Engl J Med. 2013; 368: 22-33.


一方で、PVやETにおいて、血小板数や血小板機能と血栓症の関連を論じた報告はありません。

ただし、血小板数が増加することで大出血をきたすやすくなるという報告は多いです。

血小板数>125万/μLになると、出血のリスクは10倍以上になります。

Campbell PJ, et al. Correlation of blood counts with vascular complications in essential thrombocythemia: analysis of the prospective PT1 cohort. Blood. 2012; 120: 1409-11.

従って、血小板数を低下させる治療を考慮する意義は、血栓症ではなく出血を抑制することにあります。

Barbui T, et al; European LeukemiaNet. Philadelphia-negative classical myeloproliferative neoplasms: critical concepts and management recommendations from European LeukemiaNet. J Clin Oncol. 2011; 29: 761-70.


MPNにおける白血球数増加は、動脈血栓症の独立した危険因子です。

Barbui T, et al. Perspectives on thrombosis in essential thrombocythemia and polycythemia vera: is leukocytosis a causative factor? Blood. 2009; 114: 759-63.

PVやETにおいて骨髄抑制治療を行う意義としては、白血球数を正常域に保つこともあげられます。


従来より良く知られている動脈硬化(心血管疾患)の危険因子である高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙も、MPNにおける血栓症の危険因子となっています。

ET患者における血栓症発症リスクを評価するIPSET-thrombosisスコアでは、心血管疾患の危険因子も含まれています(下表)


 ET患者におけるIPSET-thrombosisスコア

表2

Barbui T, et al. Development and validation of an International Prognostic Score of thrombosis in World Health Organization-essential thrombocythemia (IPSETthrombosis). Blood. 2012; 120: 5128-33.

血栓症発症リスクは、低リスク群、中等度リスク群、高リスク群においてそれぞれ、1.03%、2.35%、3.56%(人・年)でした。

骨髄抑制治療は、高リスク群に対してのみ行われるべきでしょう。

(続く)

<リンク>
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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33 | 血栓性疾患

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