悪性腫瘍(癌)と血栓症(17)VTEの急性期治療
悪性腫瘍(癌)と血栓症(16)PVとETに対する治療より続く
悪性腫瘍(癌)と血栓症(17)VTEの急性期治療
癌関連の静脈血栓塞栓症(VTE)の初回治療薬としては、低分子へパリン(low molecular weight haparin: LMWH)、未分画ヘパリン(unfractionated heparin: UFH)、フォンダパリヌクス(日本での保険適用は、静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い次の患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制:下肢整形外科手術施行患者、腹部手術施行患者、急性肺血栓塞栓症及び急性深部静脈血栓症の治療のみです)が候補にあげられます。
有効性には差はないものの、3ヶ月後の死亡率の評価ではLMWHが優れています。
Akl EA, et al. Anticoagulation for the initial treatment of venous thromboembolism in patients with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2014; 6: CD006649.
この理由は不明ですが、LMWHの抗腫瘍効果の可能性も指摘されています。
LMWHはUFHとは異なりモニタリングが不要である点もメリットです。
現在のエビデンスからは、癌関連血栓症の初回治療薬としてはLMWHが推奨されます(ただし、日本では保険診療の制限がありますので、VTEに対してLMWHは使用しにくい環境にあります)。
Lyman GH, et al. Venous thromboembolism prophylaxis and treatment in patients with cancer: American Society of Clinical Oncology clinical practice guideline update. J Clin Oncol. 2013; 31: 2189-204.
ただし、LMWHと比較して、UFHにも以下のような利点があります(特に腎障害患者において)。
1)半減期が短いこと
2)プロタミン硫酸で中和できること
3)肝代謝にも依存していることの
重症腎障害患者では、LMWHよりもUFHの方が良い適応となる可能性があります。
(続く)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)