金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年09月03日

100年後の医学:癌、血栓症、エイズ

タイムマシン 「100年後の医学」を見てみたいと思われた方はおられないでしょうか。
100年後まで生きることはできませんので、タイムマシンの力を借りなければいけません。

さて、100年後を考える前に、現在を考えてみたいと思います。

現代の人間は、下記のいずれかの疾患で命を失うことが大変多いです。
3大疾患と言って良いのではないかと思います。

 

 


1)悪性腫瘍(がん)
2)血栓症(脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓など)
3)感染症(エイズなど)


おそらく100年後もこの状況は続くのではないでしょうか。

まず、エイズです。抗HIV薬は、次々と開発されています。しかし、残念ながら、現在の医学では完全にHIVを死滅させることはできません。そのため、抗HIV薬は永続的に内服する必要があります。是非とも100年後には、1週間の内服でHIVが100%死滅して、内服を止めてもHIVが増殖しないようになっていると良いと思います。さらには、是非ともワクチンの開発に成功して欲しいです。HIVはすぐに変異するため、ワクチンの開発は困難と言われてきましたが、そこを何とかしたいです。できれば、100年後と言わず、10〜20年でエイズを撲滅したいところです。


次に、悪性腫瘍です。これは、なかなか厄介です。私が学生のころは(25〜30年前になりますが)、20年後にはがんは制圧されているでしょうと講義で習ったような気がいたします。しかし、残念ながらそうはなっていません。診断技術も、治療技術も格段に向上したのですが、残念ながら、悪性腫瘍の制圧にはまだまだ年月がかかりそうです。現在、すぐれた治療法が多数開発されているのですが、さらに常識を打ち破った画期的な治療法が欲しいところです。


最後に血栓症です。この世から血栓症をなくすにはどうすれば良いでしょうか? ここは、遺伝子治療に期待したいです。 今の人間は出血には大変強いのですが、血栓症にはとても弱いです。その理由は、血小板や凝固因子と言った止血因子はたっぷりあるにもかかわらず、凝固阻止因子は極めて乏しい状況であるのが原因の一つです。これをなんとかする必要があります。


遺伝子操作により、凝固阻止因子を10倍増やしたいところです。


具体的には、アンチトロンビン、プロテインCなどの凝固阻止因子を今の10倍量にしたいところです。そうすれば、凝固因子とのバランスがよくなるに違いありません。 本当は、このような作業は神様にお願いしたいのですが、どうも神様は怠慢のようです。今の人間は、血栓症で死にやすい生物になってしまっています。

100年の医学は今の医学のレベルと比較しますと、とても医学とはいえないようなレベルでした。同じことが100年後にも起きると思っています、つまり、今の医学は、100年の医学によって完全に否定されているのではないでしょうか。

100年後、さらに言えば1,000年後の医学を是非見てみたいとしばしば思っているところです。いったい、どうなっていることでしょう。タイムマシンがあれば、こっそり100年前の医学を覗きにいくことができるのですが。。。

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:10| 医学全般 | コメント(0) | トラックバック(0)

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