金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年09月05日

抗リン脂質抗体症候群、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント

間下このみamazon

抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は、最も高頻度にみられる後天性の血栓性素因です。

臨床症状として
1)血栓症(動脈血栓症、静脈血栓症):脳梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓など。
2)不育症(習慣性流産)
があり、


臨床検査所見として以下のどちらかが陽性であれば診断されます(以下のどちらもが、抗リン脂質抗体です)。
1)ループスアンチコアグラント
2)抗カルジオリピン抗体
(国際的には、抗β2GPI抗体も)

 

上記の検査が陽性であっても、血栓症や不育症がなければ、「抗リン脂質抗体症候群」とは言いません。単に、「抗リン脂質抗体陽性」の症例と言い方に留まります。ただし、このような検査のみ陽性の方であっても、将来血栓症を発症すれば、その時点で「抗リン脂質抗体症候群」と言う病名がつきます。

抗リン脂質抗体症候群は極めて多い、後天性の血栓性素因です。おそらく、抗リン脂質抗体症候群であるにもかかわらず診断のなされたいない人が多数おられるものと推測します。ひょっとしたら、糖尿病よりも多いのではないかと思っている位です

将来的には、ループスアンチコアグラントと、抗カルジオリピン抗体が健康診断の項目に組み込まれる時代がくるのではないかと真剣に思っています。


さて、ループスアンチコアグラントと、抗カルジオリピン抗体ですが、どのような場合に測定すべきでしょうか(どのような場合に、抗リン脂質抗の存在を疑って検査すべきでしょうか)?

下記の場合は、必ず検査すべきと思われます。


1)習慣性流産、不育症

2)危険因子が明らかでない動脈血栓症(脳梗塞など)

3)全ての静脈血栓症(深部静脈血栓、肺塞栓など)

4)膠原病(全身性エリテマトーデスなど)では必須の検査

5)原因不明の、APTT延長、血小板数低下



適切な検査がなされるかどうかで、患者さまの治療方針と、人生がまるで変わってしまいますので、臨床検査はとても重要だと思います。

なお、子役で有名であった、現在は写真家としてもご活躍の、間下このみさんがこの病気であることをご自分で公表されています。このことをきっかけに、抗リン脂質抗体症候群が日本国民の間に多少なりとも浸透したのではないかと思っています。

著名人の方の役割として、このような健康、病気に対する関心を高めるということもあるように思っています。間下このみさん、ありがとうございます。

画像(間下このみさん)は、amazonからです。

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:58| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

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