深部静脈血栓症と血栓性静脈炎の違い
深部静脈血栓症と血栓性静脈炎は、名前は似ていますが違う病気です。
研修医の先生とお話していますと、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)かと思ってずっとお聞きしていたところ、実は血栓性静脈炎だったということも多々ありました。
両者が合併することも皆無ではないのですが、病態も治療方法もまるで違いますので、原則として分けて考えるべきなのです。
血栓性静脈炎
1)表在静脈が問題となる病気です。まず、炎症が先におきますが、二次的に血栓が形成されます。
2)原因:静脈瘤、外傷が原因となることがありますが、原因不明も多いです。
3)症状:表在静脈の発赤、疼痛が見られます。炎症を起こした静脈の走行を皮膚を通してみることができます。炎症を起こした血管を押さえると痛いです。重症例では、皮膚が汚くただれた感じになります。
4)肺塞栓:まず合併しません。
5)治療:局所療法、消炎鎮痛剤、時に抗生剤。抗血栓療法は不要です。
深部静脈血栓症
1)深部静脈が問題となる病気です。まず、血栓が先におきますが、二次的に炎症所見を伴います。
2)原因:長期臥床、悪性腫瘍、先天性&後天性凝固異常などが原因になります。
3)症状:片下肢の腫脹、疼痛。深部静脈の走行を皮膚を通してみることはできません。
4)肺塞栓:合併することがあります。重症例では、肺塞栓が致命症になることがあります。
5)治療:抗血栓療法。急性期はヘパリン類(未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、ダナパロイド)、慢性期はワーファリンを使用します。
見た目には、血栓性静脈炎の方が派手ですので重症に見えるかもしれませんが、致命症になることがあるという意味では、深部静脈血栓症の方が重症と言えます。
今回とりあげた2つの病気に限りませんが、目で見て分かる病気よりも、見えない病気の方がしばしば怖い病気のことが多いのです。
なお、画像は深部静脈血栓症のガイドラインからです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:05| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)