敗血症に合併したDICの発症機序
第21回日本検査血液学会学術集会(金沢2010年):DICのシンポジウムあり
参考書籍:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
敗血症に合併したDICの発症機序は大変複雑です。この複雑であることが敗血症に合併したDICの予後が現在でも大変厳しい理由でもあります。少しでも分かりやすく説明を試みたいと思います。今回は、接着因子や好中球活性化(顆粒球エラスターゼ)の内容は割愛いたしました。
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DIC病型分類に関する欧文論文:Classifying types of disseminated intravascular coagulation: clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2014, 2: 20.
1)組織因子(TF)と凝固活性化:
敗血症では、lipopolysaccharide(LPS)や炎症性サイトカイン(TNF、IL-1など)が大量に体内に発現、存在します。
LPSや炎症性サイトカインが、単球/マクロファージや血管内皮細胞に作用しますと、これらの細胞から、組織因子(TF)が大量に産生されて、凝固活性化がおこります。
凝固活性化の結果、トロンビンが過剰に産生されますと、フィブリン(=DICの場合は微小血栓)が多発します。
2)血管内皮トロンボモジュリンの抗凝固性の低下:
LPSや炎症性サイトカインが、血管内皮に作用しますと、血管内皮に存在している抗凝固性物質であるトロンボモジュリン(TM)の発現が低下します。このことも、凝固活性化に拍車をかける要因になります。最近、使用可能となった遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)は、この発現低下したTMを補充することになります。
3)PAIと線溶抑制:
血栓を溶解しようとする作用が線溶です。血管内皮から組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)が産生されますと、t-PAはプラスミノゲンをプラスミンに転換し、プラスミンが血栓を溶解します(これを線溶と言います)。
しかし、敗血症では、LPSや炎症性サイトカインの作用により、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)が過剰に産生されます。
そのため、敗血症に合併したDICでは、線溶が抑制されて血栓が残存しやすくなり、微小循環障害に起因する臓器障害をきたしやすくなります。
敗血症に合併したDICでは臓器障害をきたしやすいのですが、線溶抑制状態にあることが大きな理由の一つです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:04| DIC | コメント(0)