播種性血管内凝固症候群(DIC):PAIの変動(敗血症、癌、白血病など)(図解14)
前回の記事で、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)はどういうものであるかの記事を書かせていただきました。
さて、それでは、DICの代表的な基礎疾患である急性前骨髄球性白血病(APL)、APL以外の急性白血病、固形癌、敗血症(sepsis)ではどうなっているでしょうか?
上図で示されている縦軸は、PAIの中でも活性を有しているactive PAIです。この測定法では健常人は、15ng/mL以下になります。
敗血症においては、PAIは健常人の10倍と著増しています。つまり、敗血症においては線溶活性化に対して強い抑制がかかっていることになります。
一方、APLにおいてはPAIのレベルは健常人と大差ありません。つまり、APLにおいては線溶活性化に全くブレーキをかけていないことになります。
APL以外の急性白血病や固形癌は、APLと敗血症の中間的なレベルにあります。このように、凝固活性化(TATの上昇)は全DIC症例において共通の病態ですが、線溶活性化に対する抑制は基礎疾患によって大きく異なっています。そのために、DICの基礎疾患によって線溶活性化(PICの上昇)の程度は大きく異なるのです。
DICの病態を特徴つける点で、PAIは極めて大きな意義を有しているのです。
線溶抑制状態の強さを不等号で表しますと、以下のようになります。
線溶抑制状態:APL<急性白血病、固形癌<敗血症
なお、DICの図解シリーズの今までの記事は、右の記事カテゴリーの
「播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)」← クリック(1)
・NETセミナー:DICの病態・診断 ← クリック(3)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:47| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)