金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2009年01月27日

第10回 北陸血管病変研究会のご案内

第10回北陸血管病変研究会
当番世話人 山岸正和
世話人 金子周一、多久和陽、竹原和彦、中尾眞二、山本博(五十音順)

                         
◆日 時  平成21年2月19日(木) PM6:00〜8:00
◆場 所  ホテル金沢 2階 ダイヤモンド

プログラム

開会の挨拶  金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学教授   中尾眞二 



一般演題(18:00)
座長  金沢大学大学院医学系研究科血管分子生理学 多久和 陽 先生

1.能登半島地震におけるDVTボランティア活動から得た教訓
寺上貴子1,2,大場教子2,吉田知孝2,森下英理子1,3,朝倉英策3,木村圭一4,大竹裕志4,渡邊剛4,和田隆志2,中尾眞二3
(金沢大学大学院医学系研究科病態検査学,同附属病院検査部、血液内科、心肺・総合外科

2.脂肪組織由来間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の遺伝子発現、分泌タンパク質の差異の検討
中西千明、坪川俊成、多田隼人、土田真之、高田睦子、川尻剛照、野原淳、田川庄督、井野秀一、山岸正和
(金沢大学附属病院 循環器内科)

3. ラット高血圧モデルにおける血管平滑筋のミオシン軽鎖ホスファターゼMLCPを負に制御するCa2+依存性PI-3KC2α- Rho経路の活性化

岡本安雄、Mohammed Ali Azam, 吉岡和晃, 多久和陽
(金沢大学大学院医学系研究科 血管分子生理学)


【特別講演】  (19:00)
座長 金沢大学循環器内科教授  山岸正和 先生

   「幹細胞生物学の血管医学への応用」
   東海大学 基盤診療学系 再生医療科学 教授 浅原孝之 先生


閉会の挨拶   金沢大学大学院医学系研究科血管分子生物学教授 山本博先生



特別講演要旨】 

幹細胞生物学の血管医学への応用 

近年の神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞などの発見、研究が進む中、血管内皮前駆細胞 endothelial progenitor cellが成体の血液中に存在し、重症虚血部位の血管形成に関与することが判明した。

この機序は、胎児期のみに存在するとされた血管発生Vasculogenesis)、つまり血管内皮前駆細胞が 未分化のままその場所にたどり着き、増殖、分化することで血管を構築する過程、に一致し、これまで考えられてきた成体の血管形成、既存隣接血管の血管内皮細胞による増殖 、遊走により成立する血管新生Angiogenesis とは異なる概念が生まれた。

この血管内皮前駆細胞は、骨髄移植マウスの実験から骨髄由来で癌、創傷治癒、虚血あるいは子宮、卵巣の血管形成にvasculogenesisの機序で参加していく事が判明した。

病理学的状態の場合、サイトカイン・増殖因子の影響で血管内皮前駆細胞の分画は骨髄より強制動員mobilization され、血管内皮前駆細胞動態の活性化が血管形成の発達に寄与している事も判明した。

この血管内皮前駆細胞の研究は医療応用に大きな可能性を秘めている。虚血部位の血管新生療法や動脈硬化部位の血管内皮再生療法に、増殖させた血管内皮前駆細胞を応用する試み(Cell therapy) が研究されている。

本講演では、この血管内皮前駆細胞の幹細胞生物学を紹介すると共に、血管再生治療のための血管内皮前駆細胞の臨床応用の現状と未来を紹介する。とくに、最近の研究では、血管再生と臓器再生の相互性が注目されつつある。臓器再生治療への、これらの細胞治療の可能性についても紹介する。

 

 

【一般演題(1)の抄録】

能登半島地震におけるDVTボランティア活動から得た教訓

【目的】平成19年3月25日AM9:42に、能登半島沖を震源地とするM 6.9の強い地震が発生した。そこで今回我々は、金沢大学附属病院エコノミークラス症候群予防チームを発足し、地震発生5日目と9日目に、深部静脈血栓症(DVT)の予防と早期発見・早期治療を目的として、問診およびFDP・Dダイマーの測定、下肢静脈エコー検査を実施した。さらに平成19年7月に、追跡調査を目的として3回目の検査を実施した。今回、地震後早期に2回実施した結果および追跡調査の結果を解析し、下肢静脈エコー所見によるDVTの発症状況と血液検査結果についてまとめたので報告する。

【対象および方法】対象は、19ヶ所の避難所で避難所生活を余儀なくされていた一般住民789例とした。希望した被災者に医師が問診および検査の説明を行い、書面による承諾が得られた対象者に下肢静脈エコーと血中FDP、血中Dダイマーを測定した。

【結果】DVT陽性例は、第1回目は12/167例(7.2%)で、血栓性状より急性期3例、慢性期9例、第2回目は9/31例(29.0%)で、急性期4例、慢性期5例であった。地震発生直後、総計で21/198例(10.6%)でDVTが認められ、急性期DVTは7例(3.5%)であった。血中FDPおよびはDダイマーは、DVT陽性群で有意に高値を示した。追跡調査である第3回目のDVT陽性率は、7/39例(17.9%)で全例慢性期DVTであった。前回DVT陽性であった21例のうち10例が経過観察として再検査を実施し、4例でDVTを認めた。血中FDPおよびDダイマーは、共にDVT陽性群と陰性群では明らかな有意差は認めなかった。なお、今回FDP・Dダイマーが共に高値を示すがエコー検査にてDVT陰性と判定され、再検査にて血栓を認めた1症例を経験した。一方で、両マーカーが共に正常値を示す急性期DVT陽性例が3例存在した。

【総括】地震後早期のDVT陽性者の血中FDPとDダイマー値は、陰性者に比し有意に高値を示し、FDPおよびDダイマーの測定はDVTの診断に有用であると考えられた。ただし、これらのマーカーのみではDVTの見落としがありえるため、エコー検査を併用するとともに、DVT発症急性期をより感度よく検出するマーカーの検討も、今後必要であると思われた。

 


金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログへ クリック

金沢大学 血液内科・呼吸器内科HPへクリック

研修医・入局者募集へ  ← クリック

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:28| 研究会・セミナー案内 | コメント(0) | トラックバック(0)

◆この記事へのトラックバックURL:

http://control.bgstation.jp/util/tb.php?us_no=426&bl_id=391&et_id=27463

◆この記事へのコメント:

※必須