金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年02月06日

先天性血栓性素因の診断:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(5)

アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症(4)からの続きです。

 

 【先天性血栓性素因の診断の流れ】

先天性アンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)欠損症といった先天性血栓性素因の診断の流れは、以下のようになります。

1)先天性血栓性素因を疑わせる臨床所見があること(ただし家族調査family studyで診断される場合は臨床所見がないことがあります)。

2)AT、PC、PSいずれかの活性低下を認めること。

3)AT、PC、PSの低下が後天的要因を除外できること。

4)最終的には、遺伝子診断が得られれば診断が確定します。



【先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝形式をとります。ホモ接合体は致死的ですので、通常はヘテロ接合体として認められます。血中AT活性は正常の50%程度を示します。以下のように分類されます。

●    I 型:AT抗原量・活性ともに低下する古典的欠乏症(産生異常)。
●    II 型:抗原量が正常であるものの活性が低下するいわゆる分子異常症。さらに以下のサブタイプに分類されます。
○     II 型−RS:反応中心部位(reactive site:RS)に異常を認めプロテアーゼ阻害活性が低下するタイプ。
○     II 型− HBS:へパリン結合部位(heparin binding site:HBS)に異常を認めるタイプ。U型-HBSでは、ホモ接合体が報告されています。
○     II 型−PE:単一の遺伝的変異が多面的な機能異常(pleitropic effects:PE)を示すタイプ。

 

【先天性プロテインC(PC)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝で、ほとんどの場合ヘテロ接合体として認められます。血中PC活性値は、多くの場合、正常の30〜60%程度です。2つのタイプに分類されます。

●    I 型:活性と抗原が同程度に低下する産生異常。
●    II 型:抗原値は正常であるものの活性値が低下する分子異常。

現在までに300以上の症例報告がありますが、I 型へテロ接合体が約8割と圧倒的に多く、II 型ヘテロ接合体が1割強です。残りが、ホモ接合体と複合へテロ接合体ですが、きわめて稀(50万〜70万人に1人)です。


【先天性プロテインS(PS)欠損症の診断】

 本症は常染色体優性遺伝形式をとり、発症頻度は先天性血栓性素因の中で最も多いです。
臨床症状は先天性PC欠乏症と類似しており、検査所見もヘテロ接合体では血中PS活性値は正常の30〜60%程度を示します。PS活性値が低下している場合は、後天性に低下する病態の可能性を考えながら、先天性欠損症の診断とサブタイプの決定を行います。

●    I 型:遊離型PS抗原量もPS活性も低下する産生異常症。
●    II 型:遊離型PS抗原量は正常であるもののPS活性が低下する分子異常症。

 


【凝固異常症の遺伝子検査のご依頼は以下までどうぞ!】

金沢大学 血液内科・呼吸器内科

info@3nai.jp

管理人が内容を拝見した上で、問題がなければ、血液凝固異常症遺伝子検査担当の専門医師に転送いたします。その後は、担当専門医師と直接連絡をとっていただくことになると思います。



 (続く)

 

【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24| 血栓性疾患 | コメント(0) | トラックバック(0)

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