胃食道逆流症(GERD):咳嗽の診断と治療(10)
副鼻腔気管支症候群(SBS):咳嗽の診断と治療(9)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連記事)。
【胃食道逆流症】 gastro-esophageal reflux disease(GERD)
概念
胃酸が食道に逆流することによって、何らかの症状や合併症が生じている状態を胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)と言います。ただし、内視鏡的な逆流性食道炎とは一致しません。
GERDの症状の一部に乾性咳嗽があります。
また、乾性咳嗽が唯一の症状の場合もあります。
病態
以下の2つの機序が考えられています。
1)reflex mechanism:
胃食道逆流によって食道下端に存在する迷走神経末端が刺激され、迷走神経反射を介して咳嗽が発生する機序です。
2)microaspiration mechanism:
胃食道逆流によって胃内容物が気管・気管支に少量誤飲され、気管支平滑筋や咳受容体が直接刺激されることによって咳嗽が発生する機序です。
また、咳嗽によって誘発された胃食道逆流がさらに咳嗽を悪化させるという咳嗽‐逆流自己悪循環(cough-reflex self-perpetuation cycle)説も提案されています。
診断
胃食道逆流症(GERD)による咳嗽を疑うのは、以下の図(再掲です)に示した治療的診断に失敗した時です。
GERDを疑えば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しますが、咳嗽が改善するまでに必要な平均期間は161〜179日であり、長期間の投与が必要です。PPIによって咳嗽が消失すればGERDと診断できます。
簡易診断基準を以下に示します。
胃食道逆流による慢性咳嗽の簡易診断基準
1.治療前診断基準
8週間以上継続する慢性咳嗽で,以下のいずれかを満たす
(1)胸やけ、呑酸など胃食道逆流を示唆する上部消化器症状を伴う
(2)咳嗽の原因となる薬剤の服用(ACE阻害薬など)がなく,抗菌薬,H1拮抗薬,気管支拡張薬および吸入ステロイド薬が無効
2.治療後診断
胃食道逆流に対する治療(プロトンポンプ阻害薬、H2拮抗薬など)により咳嗽が軽快する
治療
十分量のPPIを投与します。
著効例では投与2週間で咳嗽の著しい改善を示すことが報告されていますが、通常は4週間以上の投与が推奨されています。
PPIが無効な症例では、外科的治療(fundoplication)が実施されることもあります。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
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慢性咳嗽の診療
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【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:58| 咳嗽ガイドライン | コメント(0) | トラックバック(0)