金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年02月22日

免疫(抑制)療法:造血幹細胞移植後の再発(3)

 

【造血幹細胞移植後の再発時の治療】

1.    免疫抑制療法中止

 慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期再発は、免疫抑制療法の中止のみで約50%の奏功率が期待できますが、他の血液腫瘍への効果は不明です。
なお、活動性移植片対宿主病(GVHD)を有しながら再発した場合には、免疫抑制療法をすぐに中止できないことも多いのが現状です。


2.    化学療法・放射線治療


 免疫療法の有用性を最大限に引き出すため、免疫療法時に完全寛解を達成していることが望しいです。

化学療法:
急性白血病や慢性骨髄性白血病(CML)急性転化再発は、病勢が急速に進行しやすいため、早急に化学療法を行います。

gemtuzumab ozogamicin (GO)・dasatinib:
CD33陽性-急性骨髄性白血病(AML)・Ph陽性-急性リンパ性白血病(ALL)の場合、髄外病変に対する効果を期待して、gemtuzumab ozogamicin (GO)・dasatinibの適応を考慮します。初回移植後の髄外再発率(10-20%)を減らすために、髄外病変の既往など髄外再発の危険性が高い場合は、初回移植の前処置に組み入れるべきかもしれません。

放射線治療:
孤立性髄外再発には放射線治療が推奨されます。反応性は一般に良好ですが、全身性再発が続発しやすいですので、化学療法の併用を考慮します。


3.    免疫療法
 ドナーリンパ球輸注(DLI)再移植のどちらを第一選択にすべきかについては、エビデンスに乏しいです。ただし、化学療法直後にG-CSFで動員して採取した末梢血白血球を輸注するドナーリンパ球輸注と、緩和的前処置後再移植に本質的な差は少ないと考えられます。

ドナーリンパ球輸注・再移植の予後良好因子は、以下のように共通することが多いです。

1)    両治療共通:初回移植から再発までの期間4〜12か月以上
2)    両治療共通:免疫療法時完全寛解・患者年齢20歳未満
3)    ドナーリンパ球輸注のみ:再発時ドナー型キメリズム50%超

ドナーリンパ球輸注の予後良好因子を持つ急性骨髄性白血病(AML)には、ドナーリンパ球輸注が妥当と思われます。

 欧州血液骨髄移植グループ(European Blood Marrow Transplantation Group: EBMT)の報告によりますと、ドナーリンパ球輸注時寛解または予後良好染色体の場合、2年生存率は56%と良好であると報告されています(下図)。

 

再発図

 


緩和的前処置を用いれば、骨髄破壊的前処置移植で懸念される高い治療関連死亡率は改善しますが、再発率の増加により相殺される可能性が高いです。

 AML再発の場合、HCT-CIが再移植の予後に影響する可能性があります。予後因子からドナーリンパ球輸注の効果が期待できず、HCT-CIが2点以下の急性骨髄性白血病(AML)再発に関しては、GOを前処置に組み入れた緩和的前処置再移植を第一選択とすべきかもしれません。あるいは、DLIとGOの組み合わせも有望と思われます。なお、初回移植と異なるドナーを選んでも成績に差はみられないという報告があります。

 逆に、臍帯血移植など初回移植のドナーから再移植ができない場合、別のドナーを選ぶことは可能と考えられます。

 初回移植後4〜5か月以内の急性白血病再発には、DLI・再移植単独の効果はほとんど期待できません。また、再発時期を問わず、ALL再発にDLIはほぼ無効です。

DLI・再移植の効果が期待できない場合、サイトカイン療法や養子免疫療法・抗体療法など、より実験的な治療を検討すべきかもしれません。

 

(続く)

 

 
【造血幹細胞移植後の再発】

1)治療の種類  

2)免疫療法&白血病再発

3)免疫(抑制)療法

4)移植後微少残存病変(MRD)

 

【シリーズ造血幹細胞移植前処置としてのATG

1)背景

2)作用機序

3)GVHD予防 

4)晩期効果 

5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法 

6)臍帯血移植&GVHD


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汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について

急性骨髄性白血病の治療

悪性リンパ腫の診断

造血幹細胞移植

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ドナーリンパ球の威力 −ドナーリンパ球輸注(DLI)−

貧血患者へのアプローチ

輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法

血液内科に関する研修医からのQ&A

 

【シリーズ溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:02| 血液疾患(汎血球減少、移植他) | コメント(0) | トラックバック(0)

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