免疫療法&白血病再発:造血幹細胞移植後の再発(2)
【再発後治療の評価】
造血幹細胞移植後の再発症例に対しての治療成績を評価する場合には、以下の点を念頭におく必要があります。
1)初回移植治療以上の成績は期待できないこと。
2)免疫療法を行わない場合の治療成績が極めて不良であること。
初回移植治療後の5年生存率は、以下の通りです(日本造血細胞移植学会平成19年度全国調査報告書より)。
・急性骨髄性白血病(AML):45%
・急性リンパ性白血病(ALL):38%
・慢性骨髄性白血病(CML):57%
・悪性リンパ腫(ML):53%
・骨髄異形成症候群(MDS):47%
・多発性骨髄腫(MM):44%
ですから、再発後治療の成績はこれが上限となります。
免疫療法を行わない場合、移植後急性白血病再発の5年生存率は5%程度、長期生存率はほぼ0%です。ただし。。。。
・ 一方、CML慢性期再発は、DLIで初回移植と同等の治療成績が期待できます(上図)。ただし、imatinibにより、移植適応のCMLは激減しているのが現状です。
・ 低悪性度非ホジキンリンパ腫も、CML慢性期に匹敵する成績が報告されています。
これらを除きますと、免疫療法の奏功率は10〜30%程度、長期生存率は10〜20%です。
【移植後の白血病再発:特徴】
移植後白血病再発の特徴は3つあります。
1) 再発時の白血病細胞は増殖能が高いため、一定のGVL効果がみられても、それを上回る速度で進行するために無効に終わることが多いです。
2) 移植後再発の危険因子が、移植時非寛解(抗がん剤治療を繰り返している可能性が高い)・緩和的前処置(骨髄破壊的前処置が困難であった)・高齢であることが示すように、再発時の臓器予備能が低く、再発治療後重篤な臓器障害が起こりやすいです。
3) 再発後治療により骨髄寛解が得られても、髄外再発しやすいという特徴があります。ドナーリンパ球輸注(donor lymphocyte infusion: DLI)後髄外再発は骨髄再発の約2倍起こり、髄外再発に同種抗腫瘍 (graft-versus-malignancy: GVM)効果は期待できないのです。
(続く)
【造血幹細胞移植後の再発】
1)治療の種類
2)免疫療法&白血病再発
3)免疫(抑制)療法
4)移植後微少残存病変(MRD)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:06| 血液疾患(汎血球減少、移植他) | コメント(0) | トラックバック(0)