2009年03月22日
出血時間、血小板凝集能:血液凝固検査入門(25)
クロスミキシングテスト(混合試験):血液凝固検査入門(24)から続く。
出血時間(bleeding time:BT)
出血時間というのは、人の皮膚をランセット(メス)で切開して出血させて、その出血が、何分(何秒:30秒毎です)で止まるかをみる検査です。
現在、最も普及している方法は、Duke法です。
耳たぶを、ランセット(メス)で切開して出血させます。そして、30秒毎に白く丸いろ紙で、血滴を吸い取っていきます。血液が出なくなった時点が、出血時間になります。出血時間が延長するのは以下の場合です。正常値は、5分以下(通常3分以下)です。
<出血時間の延長する病態>
1) 血小板数の低下
2) 血小板機能の低下
3) 血管壁の脆弱性の存在
上記の中でも、2)の意義が最も大きいです。
1)の血小板数が低下している場合には、出血時間は延長しているに決まっていますので、臨床の場であえて出血時間をすることはまずないです。
3)の血管壁脆弱性の存在は、たとえばオスラー病などですが、極めてまれな疾患です。血液内科専門医にとっても、数年に1例遭遇するかどうかではないでしょうか。
血小板数が正常であるにもかかわらず、血小板機能が低下している病態は少なくありません。血小板機能の低下をスクリーニングする検査が出血時間ということになります。
国家試験的には、上記の1)2)3)全てを知っている必要がありますが、臨床的には、血小板機能をみるスクリーニング検査が出血時間ということができます。
<出血時間の延長する代表的疾患>
1) 血小板数の低下:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ほか多数。
2) 血小板機能の低下:血小板無力症、von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群、尿毒症、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)内服、抗血小板薬内服時(アスピリン、プラビックス、パナルジン、プレタール、プロサイリン、ドルナーなど)。
3) 血管壁の脆弱性の存在:オスラー病など。
この出血時間ですが、従来術前検査に出血時間は不可欠の検査とされてきました。しかし、術前検査に出血時間が必要かどうかは、専門家の間でも意見が分かれています。
術前検査として出血時間は不要と考える専門家の意見は、出血時間と手術関連出血量は全く関連しないというものです。このことを証明した論文が実際に存在します。
一方、術前検査として出血時間は必須と考える専門家も少なくありません。たとえば、von Willebrand病は、診断のされていないいわゆる隠れvon Willebrand病が相当数にのぼるのではないかという意見です。von Willebrand病をスクリーニングするのは、出血時間とAPTTですが、APTT検査が正常になってしまう軽症〜中等症von Willebrand病が少なくないと考えられています。やはり、出血時間とAPTTの両者でスクリーニングした方が、より安心という考え方です。
管理人は慎重派(臆病派?)ですので、術前検査から出血時間を割愛するのは如何なものかと思っていますが、専門家の間でも意見が分かれるところです。
さて、出血時間の延長が見られれば、臨床的には血小板機能障害が疑われます。
この場合に次に行われる検査は血小板凝集能です。血小板凝集能を十分理解するためには、ブログ記事換算で最低でも10回以上は必要だと思いますが、このシリーズは入門編ですので、詳細は割愛してエッセンスのみ今回の記事にしておきたいと思います。
<血小板凝集能低下>(エッセンス所見)
1) ADPの一次凝集の低下:
この所見がみられるのは、血小板無力症のみです。この所見と疾患が完全に、1:1対応ですので、極めて診断的意義が高いと言えます。なお、二次凝集の低下ではなく、一次凝集の低下です(二次凝集の低下は多くの病態で見られます)。ADPの一次凝集の低下というのは、ADP試薬を多血小板血漿に添加しても、全く血小板凝集がみられない現象です。
2) リストセチン凝集の低下:
この所見がみられるのは、von Willebrad病とBernard-Soulier症候群(BSS)のみです。この所見と疾患が、1:2対応ですので、これも診断的意義が高いと言えます。なお補足ですが、BSSでは、巨大血小板が出現することも有名です。
3) エピネフリン凝集の低下:
血液内科疾患でしばしばみられます。具体的には、骨髄増殖性疾患(CML、ET、PV)、骨髄異形成症候群などで見られる所見です。
4) リストセチン以外の血小板凝集能の低下:
血小板凝集能の低下と言った場合にこの所見が最も多いです。多くの血小板機能低下をきたす病態(尿毒症など)、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)や抗血小板薬の内服などで見られます。
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(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:20| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)