可溶性フィブリン(SF/FMC)、F1+2とは
可溶性フィブリン(SF/FMC)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
【基準値】
SF:<5μg/mL
FMC:<6μg/mL
F1+2:70-230 pM/L
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン 、プロトロンビン時間とは
APTT(ヘパリンのモニタリング)、トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは、プロトロンビン時間(PT/INR)とは、フィブリノゲン、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)とは、
【測定法】
SF/FMC、F1+2ともにモノクローナル抗体を用いた測定原理です。
【検査の意義】
F1+2:活性型第X因子(FXa)によって、プロトロンビンがトロンビンに転換する際に、プロトロンビンから遊離するペプチドがF1+2です。トロンビン産生量を反映しており、凝固活性化マーカーです。
SF/FMC:トロンビンの作用を受けて、フィブリノゲンがフィブリンに転換していく過程で形成される中間産物です。トロンビンが確実にフィブリノゲンに作用したことを意味しています。F1+2やトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)よりもさらに凝固が進行したことになります。
【異常値となる疾患・病態】
上昇:播種性血管内凝固症候群(DIC)、DIC準備状態
、深部静脈血栓症、肺塞栓
、その他の血栓症急性期、心房細動の一部など。
低値:ワルファリンなどの抗凝固療法中にはコントロール良好であれば正常下限になります(F1+2は、しばしば正常下限よりも更に低値となります)。
【異常値となる機序】
トロンビン産生量が亢進すれば(凝固活性化状態になれば)、SFやF1+2は上昇する点は、TATと同じです。
【注意点】
TAT、SF、F1+2、Dダイマーは採血困難者などではこの順番にartifactが出やすいです。
Dダイマーが全く正常であるにもかかわらずSFやF1+2が異常高値である場合は、artifactの可能性も考えて再検するのが望ましいです。
【検査プラン】
F1+2、TAT、SFはお互いに正相関して良いはずですが、相関から外れることも少なくないです。
その理由としては半減期や代謝経路の差異のみならず病態を反映している可能性があります。
すなわち、DICにおいてTATが著増するにもかかわらずSFが軽度上昇に留まる例は軽症であり、TATが軽度上昇に留まるにもかかわらずSFが著増する例は重症である印象を持っています。
この点は、今後の重要な検討課題です。
【備考】
TAT、SF:DIC、各種血栓症のマーカーとして期待されています。
SF:新規経口抗凝固薬の効果判定マーカーとして期待されています。
F1+2:Wa内服時に、F1+2は効果判定、PT-INRは副作用チェック目的と異なった意義を有していると思います。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
| 凝固検査
トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)とは
トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)
参考:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
【基準値】
<3〜4ng/mL
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン 、プロトロンビン時間とは
APTT(ヘパリンのモニタリング)、トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは、プロトロンビン時間(PT/INR)とは、フィブリノゲン、
【測定法】
何種類かの測定法がありますが、トロンビンに対する抗体とアンチトロンビン(AT)に対する抗体の両者共に反応する蛋白質を検出する測定原理となっています(サンドイッチEIAなど)。
【検査の意義】
トロンビンとその代表的な阻止因子であるATが1:1結合した複合体がトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)です。
トロンビン産生量、すなわち凝固活性化の程度を間接的に評価するこ とができます。
トロンビンの血中半減期は極めて短いため直接測定は不可能ですが、TATの血中半減期は3〜数分ですので測定することが可能です。
【異常値となる疾患・病態】
上昇:播種性血管内凝固症候群(DIC)、DIC準備状態
、深部静脈血栓症、肺塞栓、その他の血栓症急性期、心房細動の一部、僧房弁狭窄症に合併した心房細動など。
低値:ワルファリンなどの抗凝固療法中にはコントロール良好であれば正常下限になります。
【異常値となる機序】
トロンビン産生量が亢進すれば(凝固活性化状態になれば)、ATと結合するトロンビンが増加して、TATは上昇します。
【注意点】
凝固活性化を反映するマーカーとして、TAT、可溶性フィブリン(SF)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)、Dダイマーなどが知られてい ますが、採血困難者などではこの順番にartifactが出やすいです。
Dダイマーではまずartifactが出ないのに対して、TATでは最も artifactが出やすいです。
Dダイマーが全く正常であるにもかかわらずTATが異常高値である場合は、artifactの可能性も考えて再検するのが望ましいです(参考論文)。
【検査プラン】
DICや各種血栓症を疑った場合の診断や、治療効果の判定・経過観察を目的として測定されることが多いです。
TATのみが単独で測定されることは例外的で、FDP、Dダイマー、AT、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)などとセットで測定 されることが多いです。
DIC診断&病型分類を行うためには、グローバルマーカー以外に少なくともTAT、PIC両者の測定は不可欠です。
【備考】
TATの明らかな高値が確認されたDICや血栓症急性期の患者では、へパリン類などによる抗凝固療法が行われます。
治療効果の判定は、血小板数や、FDP&Dダイマーのみでは誤判断することがあります。
DICにおいて血小板数低下やFDP&Dダイマー上昇が遷延していても、TATが確実に低下している場合は治療法の変更を行わずに、同じ治療を継続することでDICより離脱できることをしばしば経験します。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
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フィブリノゲン(Fbg)とは
フィブリノゲン(Fbg)
【基準値】
200〜400mg/dL
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン 、プロトロンビン時間とは
APTT(ヘパリンのモニタリング)、トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは、プロトロンビン時間(PT/INR)とは、
【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、トロンビンを添加して、フィブリン析出するまでの時間を測定し、フィブリノゲン濃度既知の検体による標準線からフィブリノゲン量を求めます(トロンビン時間法)。
フィブリン析出を検出する方法は、検査機器によって異なります。
【検査の意義】
血中フィブリノゲン濃度(通常のトロンビン時間法であれば活性を測定しています)を測定します。
【異常値となる疾患・病態】
高値:炎症反応時(感染症、膠原病、悪性腫瘍など)、妊娠、血栓症急性期など。
低値:播種性血管内凝固症候群(DIC)、一次線溶亢進(線溶療法時、u-PA産生腫瘍など)、異常(・低・無)フィブリノゲン血症、肝不全(肝硬変、慢性感性など)、L-アスパラギナーゼ投与、巨大血栓症、大量出血など。
【異常値となる機序】
高値:肝での産生が亢進するためです。
低値:肝不全、L-アスパラギナーゼ投与は肝での産生低下によります。DIC、一次線溶亢進、巨大血栓症、大量出血は消費によります。
【注意点】
1) 新規経口抗凝固薬の一つであるダビガトラン(商品名:プラザキサ)内服中の患者でフィブリノゲンが著減と測定されることがあります。これは、ダビガトランの抗トロンビン効果に伴うartifactであす(プラザキサとフィブリノゲン)。DICと誤診してはいけないです。
2) DICの中でも線溶亢進型DIC(APL、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌、血管関連腫瘍など)ではフィブリノゲンが低下しやすいですが、線溶抑制型DIC (敗血症など)ではフィブリノゲン低下は稀です。フィブリノゲン低下がないからと言って、DICを否定できません。
【検査プラン】
1) 炎症反応の有無をチェックする目的に、CRPとともに赤沈値が頻用されています。
赤沈亢進は、1)ヘマトクリット低下、2)γグロブリン上昇、3)フィブリ ノゲン上昇(3所見ともに炎症時にみられます)を総合的に反映しています。赤沈亢進の一因としてフィブリノゲン上昇を知っておきたいところです。
2) 患者の重篤化にもかかわらず赤沈が遅延した場合、DICを疑うべきと言われた歴史があります。DICではフィブリノゲンが低下するためです(現在は直接フィブリノゲンを測定するためこのような赤沈の利用はしていません)。
3) フィブリノゲン低下でDICを疑った場合は、FDP、Dダイマー、TAT、PIC、α2PI、可溶性フィブリン(SF)などで診断を確定します。
【備考】
凝固線溶関連疾患で「異常」の用語が登場する疾患がいくつかありますが、タンパク量(抗原量)は正常であるにもかかわらず、アミノ酸配列に問題があるため活性が低下している疾患・病態を意味しています。
異常フィブリノゲン血症は、トロンビン時間法(通常はこの方法を用いています)によるフィブリノゲン値は低値ですが、抗原量を測定すると正常です(血栓止血エキスパートにコンサルトするのが良いです)(先天性凝固因子異常症1、先天性凝固因子異常症2)。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
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活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
【基準値】
通常30〜40秒位(試薬により異なります)
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン 、プロトロンビン時間とは
APTT(ヘパリンのモニタリング)、トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは、
【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、APTT試薬(カオリン、エラジン酸、セライトなどの接触因子活性化剤(異物)およびリン脂質が含まれる)、およびカルシウムイオンを添加して、凝固するまでの時間を計測します。
【検査の意義】
血液が凝固する機序としては、TFまたは異物(陰性荷電)による凝固の2種類が知られています(それぞれ、外因系&内因系凝固活性化機序)。
APTTは、このうち異物による凝固を反映した検査です。
APTTは、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で延長します。
【異常値となる疾患・病態】
APTT延長時に病的意義があり、以下は代表的疾患・病態です。
血友病A、血友病B、von Willebrand病(VWD)、後天性血友病A(B)、ループスアンチコアグラント(LA)、凝固第XII・XI・X・V・II・I因子因子の欠損症 またはこれらの凝固因子に対するインヒビター、へパリン投与時、ダビガトラン内服時(PTも軽度延長)など。
ワルファリン内服中、ビタミンK(VK)欠乏症、肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)でも延長することがありますが、PT延長よりも目立ちません(PTの項を参照)。
凝固活性化状態、高脂血症、妊娠などによりAPTTが短縮する場合がありますが、通常は病的意味を持たせません。
【異常値となる機序】
1)血友病A、後天性血友病A、VWD:第VIII因子活性の低下によります。VWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でありVWDでは、VWFのみならず第VIII因子活性も低下します。
2)血友病B、後天性血友病B:第VIII因子活性の低下によります。
3)LA:リン脂質依存性凝固時間が延長します。PTよりもAPTTの方が延長しやすいです。
【注意点】
採血量不十分の場合や多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、artifactで凝固時間が延長します。
透析回路やヘパリンロック部位からの採血などでへパリン混入によってもAPTTは延長します。
【検査プラン】
APTT延長がみられた場合には、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子の活性低下(複数凝固因子のこともあります)、またはLAの存在 を意味します。
血友病A&B(後天性も含め)、VWD、LAのいずれでもない場合には、凝固XII、XI、X、V、II、I因子の欠損症である可能性があ ります。
希少疾患ですが、高分子キニノゲンやカリクレインの欠損症でもAPTTが延長します。
APTT延長時、PTが正常であれば第XII、XI、IX、VIII因子活性の低下(またはLA)が予想され、PTも延長している場合には凝固第X・V・II・I因子のいずれか一つ以上の凝固因子活性低下が予想されます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
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トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは
トロンボテスト(TT)& ヘパプラスチンテスト(HPT)
【基準値】
TT:>70%、HPT:70〜130%
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン 、プロトロンビン時間とは
【測定法】
いずれもPT検査の亜系であり、組織因子による凝固時間を測定しています。
ただし、試薬に弱力価の組織因子、第V因子、フイブリノゲン(I)が含まれているため、外因系凝固活性化機序のうちVとIの影響が除かれます。
すなわち、第VII、X、II因子の減少で、測定値(%)は低下します(秒は延長しており、秒を%に換算しています)。
【検査の意義】
TTは低値での精度が良く、PIVKA(ビタミンK(VK)欠乏状態で誘導される蛋白)凝固因子の影響を受けやすいです。もっぱらワルファリン(Wa)コントロール目的に使用されます。
HPTは、正常〜正常下限レベルでの定量性が高く、PIVKAの影響を受けにくいです。肝予備能のマーカーとして用いられます。ただし、PTでも同目的を果たせるため、検査件数が低下しています。
【異常値となる疾患・病態】
ワルファリン内服中、VK欠乏症、第VII・X・II因子活性の低下、肝不全、(ループスアンチコアグラントの一部)など。
【異常値となる機序】
1) ワルファリン内服中、VK欠乏症:VK依存性凝固因子である第VII・X・II因子活性が低下するため。ワルファリン内服中は、通常TT10〜10数%でコントロールします。なお、INR 2.0 はTT 17%、INR 3.0はTT 9%に相当します。
2) 肝不全:第VIII因子を除く全凝固因子が低下するため(VK依存性凝固因子も低下)、異常値となります。
【注意点】
1) Wa関連でEBM根拠となる大規模臨床試験の多くがPT-INRで評価されているため、TTは検査件数が低下しています。しかし、純粋にVK依存性凝固3因子(VII、X、II)のみを評価する点で、本来はTTの方が優れています。たとえば炎症反応でフィブリノゲン(I)が上昇している場合、PT-INRでは実際のコントロールよりも弱いと誤判断される可能性があります。
2) Wa内服中のHPT測定は通常行ないませんが、誤って測定して異常低値を見ても当然ながら肝予備能低下を意味しません。
3) Wa関連のピットフォール:PIVKA IIはVK欠乏状態で血中に出現しますが、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られています。Wa内服中は当然PIVKA IIは著増しますが、肝細胞癌ではありません(PIVKA IIの測定自体がナンセンスです)。
【検査プラン】
1) PT、APTTが正常であるにもかかわらず、TTやHPTが低下する場合があります。TTやHPT試薬中のリン脂質がPT試薬よりも低濃度であることに起因するループスアンチコアグラントの存在を意味することがあります(参考:抗リン脂質抗体症候群)。
2) TTやHPTが正常であるにもかかわらずPTが延長している場合には、フィブリノゲンも正常であれば、第V因子欠損症(またはインヒビター)の可能性が高いです。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
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プロトロンビン時間(PT/INR)とは
プロトロンビン時間(PT)/PT-INR
【基準値】
通常10〜12秒位(試薬により異なります)
PT-INR:1.0
関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?、PT(PT-INR)正常値、プラザキサ vs ワーファリン
【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、組織因子(tissue factor:TF)およびカルシウムイオンを添加して、凝固するまでの時間を計測します。
PTの値から、INR(international normalized ratio、国際標準比)は以下の式によって算出されます。
ISI:PT試薬ごとにISI(International Sensitivity Index、国際感受性指標)が設定されています。
1.0に近い試薬が理想的とされています。
【検査の意義】
血液が凝固する機序としては、TFまたは異物(陰性荷電)による凝固の2種類が知られています(それぞれ、外因系&内因系凝固活性化機序)。
PTは、このうちTFによる凝固を反映した検査です。
PTは、凝固VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で延長(INRは上昇)します。
【異常値となる疾患・病態】
PT延長(INR上昇)時に病的意義があります。以下が代表的疾患・病態です。
ワルファリン内服中、ビタミンK(VK)欠乏症、肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症またはこれらの凝固因子に対するインヒビター、低栄養状態、リバーロキサバン内服時(APTTも軽度延長)など。
【異常値となる機序】
1)ワルファリン内服中:ワルファリンはVK拮抗薬でありVK 依存性凝固因子であるVII、IX、X、II因子がこの順番で低下します(半減期の短い順番)。特に、VII因子は最も半減期が短く最初に低下します(VK欠乏状態では、APTTよりもPTの方が先に延長します)。
2)VK欠乏症:同上。
3)肝不全、低栄養状態:凝固因子は肝臓で産生されるため、肝不全や低栄養状態ではPTやAPTTが延長します。特にPTは延長しやすいです。
【注意点】
採血量不十分の場合や多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、artifactで凝固時間が延長します。
【検査プラン】
PT延長がみられた場合には、凝固VII、X、II、I因子のいずれか(複数凝固因子のこともある)の活性が低下していることを意味します。
ワルファリン内服中、VK欠乏症、肝疾患、低栄養状態のいずれでもない場合には、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症である可能性がありますから、上記凝固因子を個々に測定します(先天性凝固因子異常症)。
【備考】
PT延長時、APTTが正常であれば第VII因子活性の低下が予想され(参考:第VII因子欠損症)、APTTも延長している場合には凝固第X・V・II・I因子のいずれか一つ以上の凝固因子活性低下が予想されます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
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線溶関連マーカー(6):DICとDVTの合併など
線溶関連マーカー(5):FDP・Dダイマー・PICの高値 より続く
線溶マーカーとは(6)
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FDP・Dダイマー・PIC解釈上の注意点
通常、FDPとDダイマーは併行して上昇することが多いです。
ただし、著しい線溶活性化がみられる病態(例えば線溶亢進型DIC)では、フィブリンのみならずフィブリノゲンの分解も進行するために、FDPの著増に対して、Dダイマーの上昇が相対的に軽度のことがあり、FDP/Dダイマー比が大きくなります(Dダイマー/FDP比が小さくなります)。
この場合、PICは著増し、α2PIやフィブリノゲンは著減しやすいです。
プラスミノゲンも中等度低下します。
一方、線溶抑制型DIC(敗血症に合併したDICに代表されます)においては、t-PAに対して阻止的に作用するプラスミノゲンアクチベータインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)が過剰に産生されて、線溶が抑制されます。
このため、血栓が多発してもあまり溶解されずにFDPやDダイマーは軽度上昇にとどまることが多いです。
線溶抑制型DICにおいては、FDPやDダイマーを過度に重要視しますと、DIC診断が遅れる懸念があります。この場合は、血小板数の経時的低下や、凝固活性化マーカーTAT、SFなどに注目することで早期診断が可能です。
FDP、Dダイマー、TAT、PICが最も上昇しやすい疾患はDICですが、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)でも上昇する場合がある点に注意が必要です。
また、播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患とDVT&PEの危険因子は、悪性腫瘍など共通していることがあります。
DIC診断基準をみたすような症例であっても、DVT&PEも合併していることがありますので、注意が必要です。
管理人らは、DVT&PEの見逃されているDIC症例が少なくないのではないかと懸念しています。
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 12:52
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線溶関連マーカー(5):FDP・Dダイマー・PICの高値
線溶関連マーカー(4):FDPのartifactなど より続く
線溶マーカーとは(5)
血液凝固検査入門(図解シリーズ)← リンク
________________________
FDP、Dダイマー、PICが高値となる病態・疾患
1) 播種性血管内凝固症候群(DIC)
2) DIC準備状態
3) 深部静脈血栓症(DVT)&肺塞栓(PE)
4) 線溶療法時
5) 手術後
6) プラスミノゲンアクチベータ産生腫瘍
7) その他
________________________
(注意)
1) 異常フィブリノゲン血症では、血清FDPによる測定の場合のみ高値となります。
2) 線溶亢進型DICでは、FDP/Dダイマー比は大きくなります。
3) 大量胸水・腹水、大血腫でもFDPやDダイマーの上昇が見られることがあり、DICとの鑑別が問題となります。
4) 手術後のみでも、FDPやDダイマーの上昇が見られることがあり、術後DICとの鑑別が問題となります。
(続く)
線溶関連マーカー(6):DICとDVTの合併など へ
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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線溶関連マーカー(4):FDPのartifactなど
線溶関連マーカー(3):FDP採血管など より続く
線溶マーカーとは(4)
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線溶マーカー測定上の注意点
FDPやDダイマーは大変安定した検査であり、artifactを生じにくいです。
ただし、留置カテーテルなどからの採血は、カテーテル内凝固をきたして、PIC、FDP、Dダイマーが偽高値となる可能性があります。
また、血清FDPの場合には、試験管内に抗凝固剤が混入しますと(例えばヘパリンロックされたカテーテルからの採血など)、専用試験管内の凝固剤が作用しなくなり上清中にフィブリノゲンが残存してしまいます。この状態で抗フィブリノゲンポリクローナル抗体を用いた測定を行いますと、偽高値となります。
異常フィブリノゲン血症では、血漿FDP、Dダイマー、PICは正常として測定されます。
ただし、血清FDPで測定しますと偽高値となります。これは、フィブリノゲンのアミノ酸配列に異常をきたした本疾患では、採血管内の凝固剤(トロンビン)がフィブリノゲンをフィブリンに転換できず、上清中にフィブリノゲンが残存してしまいます。
この状態で、抗フィブリノゲンポリクローナル抗体を用いたFDP測定を行いますと、偽高値となります。
(続く)
線溶関連マーカー(5):FDP・Dダイマー・PICの高値 へ
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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線溶関連マーカー(3):FDP採血管など
線溶関連マーカー(2):t-PA/PAI-1複合体など より続く
線溶マーカーとは(3)
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測定の実際&採血管
PICは、クエン酸ナトリウム入りの凝固検査用採血管を用いて採血し、調整した血漿をラテックス免疫比濁法、EIAで測定します。
Dダイマーは、クエン酸ナトリウム入りの凝固検査用採血管を用いて採血し、調整した血漿をラテックス免疫比濁法、EIAで測定します。フィブリノゲンとは反応しない抗Dダイマーモノクローナル抗体を使用しています。
FDPは大きく、血清FDPと血漿FDPに分類されます。
血清FDPは専用試験管が必要であるのに対しまして、血漿FDPであれば他の凝固検査と同じ採血管で良いため(採血量が少なくて済むため)、血漿FDPの方が浸透しつつあるのが現状です。
血漿FDP:
フィブリノゲンとは反応せずFDPとのみ反応する抗FDPモノクローナル抗体が使用されています。
血清FDP:
凝固剤(トロンビンなど)と抗線溶剤が含まれた専用試験管が用いられます。凝固剤が含まれているために、検体中のフィブリノゲンはフィブリンに転換し、遠心操作を行えば上清中にはフィブリノゲンは含まれないことになります。
この状態で、抗フィブリノゲンポリクローナル抗体(FDPとも反応します)を用いて測定します。
基準値
プラスミン-α2PI複合体(PIC) <0.8μg/mL
FDP <2.0〜5.0μg/mL(ただし、測定試薬により異なります)
Dダイマー <1.0〜2.5μg/mL(ただし、測定試薬により異なります)
(続く)
線溶関連マーカー(4):FDPのartifactなど へ
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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線溶関連マーカー(2):t-PA/PAI-1複合体など
線溶関連マーカー(1):Dダイマー(D dimer)など より続く
線溶マーカーとは(2)
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その名称通り、FDPには、フィブリン分解産物もフィブリノゲン分解産物も含まれますが、通常はフィブリン(血栓成分)分解産物がほとんどです(換言しますと多くの場合は、FDPとDダイマーは併行して上昇することが多いです)。
FDPやDダイマーの高値は、凝固活性化によって血栓が形成されて、かつその血栓が溶解したということを意味しています。つまり、凝固活性化も線溶活性化も進行したということになります。
t-PA/PAI-1複合体:
狭義にはt-PAとPAI-1両者の複合体のみを指しています。
血管内皮から産生されたt-PAはPAI-1と結合して、循環血中に遊離型t-PAはほとんど存在しません。そのため、t-PA/PAI-1複合体は、t-PA抗原量と近似した値をとることになります。
t-PAが上昇する病態では、PAI-1はさらに著増する(遊離型PAI-1も大量に存在する)ことが多いです。
PICが上昇した場合には線溶活性化の病態を反映していますが、t-PA/PAI-1複合体が上昇した場合には線溶抑制の病態になっていることが多いため(たとえば線溶抑制型DIC)、注意して評価する必要があります。
ニックネームとしてのDダイマー:
なお、科学的なDダイマーは前述の如く架橋化フィブリン分解産物の最小単位を意味してますが、測定キット名としてDダイマーは、架橋化フィブリン分解産物の最小単位のみならず、その他の架橋化フィブリン分解産物も測り込んでいます。つまり、Dダイマーがニックネーム的に使用されることも多いです。
(続く)
線溶関連マーカー(3):FDP採血管など へ
【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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線溶関連マーカー(1):Dダイマー(D dimer)など
線溶マーカーとは
組織因子(tissue factor:TF)の作用によって凝固活性化を生じますと、最終的にトロンビンが形成されます。トロンビンがフィブリノゲンに作用しますと、フィブリノゲンはフィブリンに転換して、さらにフィブリンが重合しますと血栓が形成されます。
この重合されたフィブリンを安定化するために、血液凝固第XIII因子による架橋結合(Cross-link)が行われます。これに対して、形成された血栓を溶解しようとする働きのことを線溶(fibrinolysis)と言います。
線溶が開始されるためには、血管内皮からの組織プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)産生が必要です。
t-PAは、プラスミノゲン(肝で産生)をプラスミンに転換し、プラスミンは血栓(架橋化フィブリン)を分解します。
血栓が分解された際に生ずる分解産物のことをFDP(Dダイマー)と言います。t-PAおよびプラスミノゲンはフィブリン親和性が高く、フィブリン上で能率良く線溶が進行します。
線溶活性化の程度を評価するためにはプラスミン産生量が分かれば良いのですが、プラスミンの血中半減期は極めて短く直接測定することはできません。
ただし、プラスミンとその代表的な阻止因子であるα2プラスミンインヒビター(α2PI)が、1対1結合した複合体を測定することは可能であり、これをプラスミン-α2PI複合体(plasmin-α2PI complex:略称PIC)と言います。
PICが高値であるということは、プラスミン産生量が多い、すなわち線溶活性化が高度であるということを意味します。
例えば、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)においては、凝固活性化と並行して線溶活性化がみられるため、TATのみならずPICの上昇がみられます。
ただし、PICの上昇度は基礎疾患により異なり、このことはDICの病態を特徴つける大きな要素の一つです。
FDPは、フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products)の略称です。そして、Dダイマー(D dimer)は、フィブリン分解産物(正確には架橋化フィブリン分解産物)の方の細小単位です。
架橋結合の部分はプラスミンで分解されないため、隣接した2つのフィブリン分子のD分画部分が第XIII因子で結合したものが最小単位となり、Dダイマー(D dimer)の語源となっているのです。
(続く)
線溶関連マーカー(2):t-PA/PAI-1複合体など へ
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血餅退縮能検査とは(5):参考文献
血餅退縮能とは(4):血餅収縮の意義 より続く
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血餅退縮能検査に関する記事を続けてきました。
これまでの記事で、本文中に文献番号を付けてきましたので、その論文を紹介させていただきたいと思います。
血餅退縮能検査の参考文献
1) Macfarlane RG: A simple method for measuring clot retraction. Lancet I: 1199-1201, 1939.
2) Castaldi PA,et al: The bleeding disorder of uraemia. A qualitative platelet defect. Lancet 2(7454): 66-69, 1966.
3)渡辺清明:出血傾向に関する検査(血小板機能に関する検査)。三輪血液病学(浅野茂隆、池田康夫、内山卓編), p1968-1976, 文光堂, 2006.
4)Ginsberg MH, et al: Divalent cation regulation of the surface orientation of platelet membrane glycoprotein IIb. Correlation with fibrinogen binding function and definition of a novel variant of Glanzmann's thrombasthenia. J Clin Invest 78: 1103-1111, 1986.
5)Kouns WC, et al: Activation of the fibrinogen binding site on platelets isolated from a patient with the Strasbourg I variant of Glanzmann's thrombasthenia. Blood 84: 1108-1115, 1994.
6)Fournier DJ, et al: A variant of Glanzmann's thrombasthenia characterized by abnormal glycoprotein IIb/IIIa complex formation. Thromb Haemost 62: 977-983, 1989.
7)Chen YP, et al: A point mutation in the integrin beta 3 cytoplasmic domain (S752-->P) impairs bidirectional signaling through alpha IIb beta 3 (platelet glycoprotein IIb-IIIa). Blood 84: 1857-1865, 1994.
8)Kunitada S, et al: Inhibition of clot lysis and decreased binding of tissue-type plasminogen activator as a consequence of clot retraction. Blood 79: 1420-1427, 1992.
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血餅退縮能とは(4):血餅収縮の意義
血餅退縮能とは(3):検査に影響を及ぼす因子 より続く
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血餅収縮の意義
1) 止血機序:
止血過程において、血小板粘着、血小板凝集、凝固活性化(フィブリンの形成)と進行した上で、凝血塊(血餅、止血血栓)が収縮することで、より強固な止血が完了します。
2) 血栓症:
血小板を含有した血栓により血管が閉塞された場合であっても、血栓が収縮することで、血液の再還流が期待できます。
ただし、血餅退縮が生じることで、血栓が線溶の作用による溶解を受けにくくなりかえって不利になるという考え方もあります 8)。
血餅退縮能の関連検査項目
1) 出血時間:
出血時間は、
・血小板数の低下
・血小板機能の低下(血小板無力症、von Willebrand病、アスピリン内服など)
・血管壁の脆弱性
のいずれかがみられる場合に延長します。
2) 血小板凝集能:
血小板無力症では、ADPの一次凝集の低下という特徴的な所見がみられます。
(続く)
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血餅退縮能とは(3):検査に影響を及ぼす因子
血餅退縮能とは(2):検査方法 より続く
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血小板無力症の分類
1. GPIIb/IIIaの量的異常
1) タイプI:GPIIb/IIIaが正常の5%以下に著減。血餅退縮は欠如。
2) タイプII:GPIIb/IIIaが正常の10〜20%存在。血餅退縮はほぼ正常。
2. GPIIb/IIIaの機能的異常(variant型)
GPIIb/IIIaが正常の50%以上存在するにもかかわらず、血小板無力症の病態。
血餅退縮は欠如する例も残存する例もあり。
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血餅退縮能検査に影響を及ぼす因子
1) 血小板数:
血小板数<10万/μLでは血餅退縮能の減弱傾向が観察され、血小板数<5万/μLでは明らかな減弱がみられます。
2) 血小板無力症:
血餅退縮能は明らかに減弱します。ただし、GPIIb/IIIaが正常の10〜20%存在するtype IIでは、血餅退縮能は低下しないことが多いです(上の表)。
Variant typeでは、欠損するものと、欠損しないものの両者の報告がみられます 4)5)6)7)。
また、血小板機能が低下する疾患の中でも、storage pool disease、von Willebrand病などでは異常になりません。
3) 赤血球数の異常(全血を用いた場合):
赤血球数の多い症例では低値を示し、赤血球数の少ない(貧血)症例では高値を示しやすいです。
4) フィブリノゲン量または機能の低下:
血餅退縮能の減弱がみられます。
5) 線溶亢進症例、第XIII因子欠損症:
血餅が経時的に縮小または溶解する現象がみられます。
6) 試験管:
ガラス試験管ではなく、シリコン処理試験管またはプラスチック試験管を用いると病態を有した検体でなくても、血餅収縮は悪くなります。
(続く)
血餅退縮能とは(4):血餅収縮の意義 へ
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血餅退縮能とは(2):検査方法
血餅退縮能とは(1):血小板無力症のスクリーニング検査より続く
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血餅退縮能検査の目的
やはり、血小板無力症のスクリーニング検査としての意義が大きいです。
血餅退縮能の次のステップの検査としては、出血時間、血小板凝集能、血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIa解析などになります。
血餅退縮能検査の方法
1) Macfarlane法(全血を使用)1)
・ 静脈血を採取して、目盛りつきのガラス遠心管に正確に5 mL入れます。
・ 針金付きのゴム栓をします(針金先端は、後で血餅を取り出すことができるように鉤状になっており血液の上層にひたる長さにします)。
・ 血液が凝固した後に、遠心管を37℃の恒温槽で、1時間incubationします。
・ 1時間経過した後、静かに針金を引き上げて凝血塊を取り除き、収縮により、凝血塊(血餅)よりしぼり出された血清量を読みます(S mL)。この際、artifactで血清量が多くならないように、静かな操作が肝要です。
・ そして以下の式により血餅退縮能を算出します。
・ 血餅退縮能=S/{5×(1—Ht/100)}×100(%)
2) Castaldi変法(血漿を使用)2)3)
・ 抗凝固剤であるクエン酸ナトリウム入り試験管で採血し、50G、15分室温で遠心し、多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)を採取します(血小板数をカウントします)。
・ その後、2000G、30分で遠心して、乏血小板血漿(platelet poor plasma:PPP)を採取します。
・ PRPをPPPで希釈して、血小板数20万/μLに調整します。
・ ガラス試験管に調整済みPRPを1mLとり、37℃の恒温槽に入れます。
・ 数分後に、トロンビン溶液(生食で50単位/mLに調整)0.2mLをPRPに加え、1時間incubationします。
・ 凝血塊(血餅)が収縮し、血清部分との分離が生じるので、ピペットで血清を取り出し、その容量(A ml)を測定します。
・ 血餅退縮能は、以下の式で求められます。
・ 血餅退縮能=A/1.2×100(%)
血餅退縮能検査の基準値
1) Macfarlane法:40〜94%
2) Castaldi変法:80〜95%。50%以下は異常。
(続く)
血餅退縮能とは(3):検査に影響を及ぼす因子 へ
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血餅退縮能とは(1):血小板無力症のスクリーニング検査
血餅退縮能は、現在あまり行われなくなってきている検査かもしれませんが、血小板、血栓を理解するという観点からも重要な検査ではないかと思います。
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血餅退縮能とは
血餅退縮能(clot retraction test)は、血小板無力症のスクリーニング検査としての意義が最も大きいですが、血小板凝集能を施行可能な医療機関であれば、あまり行われていないのが実状ではないかと思われます。
しかし、止血、血液凝固、血小板機能などの本質を知る上で、是非知っておきたい検査と言えます。
血液凝固反応が進行して凝血塊(血餅)が形成される過程で、血小板が血餅に取り込まれます。この形成された血餅は次第に収縮(退縮)していく現象が知られています。そのため、血餅中から血清が分離されてきます。
これは、血餅内で血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIa(血小板インテグリンαIIb/β3)とフィブリンが結合した状態で、血小板内の収縮蛋白の作用により血小板が収縮した結果として、フィブリンが引っ張られて血餅が収縮するためと考えられています。
なお、GPIIb/IIIaは膜を貫通しているインテグリンファミリーの一つで、裏打ち蛋白のアクトミオシン(骨格蛋白)と結合しています。GPIIb/IIIaにフィブリンが結合しますと、裏打ち蛋白の収縮力はGPIIb/IIIaを介してフィブリンに伝わり、フィブリン塊が収縮し、血餅退縮を生じます。血餅退縮は、フィブリン塊を補強する役割を演じているものと考えられています。
血小板無力症では、GPIIb/IIIaが欠損しているために、血餅退縮能は低下します。
また、血小板無力症以外では、血小板数やフィブリノゲンが低下した病態でも血餅退縮能は低下します。
(続く)
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