抗リン脂質抗体症候群の血液検査:血液凝固検査入門(26)
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)
臨床症状
1)血栓症:動脈血栓症・静脈血栓症
2)不育症(習慣性流産)
検査所見:抗リン脂質抗体(具体的には以下の2つの検査)陽性
1)抗カルジオリピン抗体(特に、β2GPI依存性)
2)ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)
(備考)最も高頻度にみられる後天性血栓性素因
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抗リン脂質抗体症候群(APS)は、臨床症状として血栓症または不育症があり、かつ、血液検査において抗カルジオリピン抗体またはループスアンチコアグラントのいずれか一方以上が陽性である場合に診断されます。
血栓症は、動脈血栓症(脳梗塞、網膜中心動脈血栓症、腸間膜動脈血栓症など多数)も、静脈血栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓、脳静脈洞、網膜中心静脈血栓症、腸間膜静脈血栓症など多数)のいずれもあります。また、動&静脈血栓症の両者を合わせ持っていることも少なくありません。たとえば、脳梗塞にも深部静脈血栓症にも罹患しているような場合です。
女性の方の場合には、習慣性流産(3回以上の流産)を含む不育症がきっかけで診断されることが多々あります(胎盤での血栓形成が原因になります)。
上記の臨床症状がみられて、検査所見として、抗カルジオリピン抗体(特に、β2GPI依存性)またはループスアンチコアグラント(LA)のいずれか一方以上が陽性である場合に診断されます。ですから、検査は抗カルジオリピン抗体とLAの両者をセットで測定する必要があります。研修医の先生のオーダーで、抗カルジオリピン抗体またはLAのどちらか一方しか測定していないことを目にすることがありますが、これでは診断見逃し例が多数出てしまいます。
抗リン脂質抗体症候群(APS)を疑ったら、必ず両検査をセットで調べる必要があります。
さて、ここで問題があります。抗カルジオリピン抗体は、EIAによる定量検査ですので問題ないのですが、LAは複数の検査を組み合わせて行う必要があり、しかも定性検査です。
加えて厄介なことに、LAは検体処理法や、コントロール血漿にどういう血漿を使用するかなどで、陽性と陰性が入れ替わってしまうことすらあるのです。LA検査ではどういう注意が必要なのでしょうか。
次回の記事で書かせていただきたいと思います。
(追記)
LA陽性検体では、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長することがありますが、APTTが延長しないこともあります。ですからAPTTで、LAをスクリーニングすることはできません。
抗リン脂質抗体症候群(APS)を疑った場合には、APTTの延長の有無にかかわらず、LA検査を行う必要があります(もちろん抗カルジオリピン抗体も)。
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(続く)
ループスアンチコアグラント(LA):血液凝固検査入門(27)
・抗リン脂質抗体症候群とは
・抗リン脂質抗体症候群と血栓症
・抗リン脂質抗体症候群と不妊症/不育症
・抗リン脂質抗体症候群と厚生労働省難病(特定疾患)認定
PT-INRは、以下の記事も御参照いただければと思います。
・PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
・PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
・ PIC
・ アンチトロンビン
・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
・ Dダイマー
・ DICの病態、診断、治療:リンク先から更に他のヘパリン類やDIC関連記事がリンクされています!
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:21| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)