後天性血友病(1):第VIII因子インヒビター
血友病と言えば、先天性出血性素因です。しかし、後天性血友病(acquired hemophilia)と言う病気があります。なぜ、血友病は先天性なのに、後天性の枕詞がつくのかと奇異に感じられるかも知れません。
後天性血友病の記載をさせていただく前に、まず第VIII因子インヒビターについて言及したいと思います。この場合のインヒビターと言うのは抗体の意味です。
第VIII因子インヒビター(抗体)が出現するのは、2つのタイプがあります。
1) 先天性血友病Aにおける同種抗体
1つ目は、先天性の血友病(特に血友病A)に、血液凝固因子製剤(血友病Aの場合は、第VIII因子製剤)を輸注することにより、抗体が出現する場合です。
この場合の抗体は、同種抗体になります。
血友病Aの患者さんにとっては、第VIII因子は自分で産生できませんので、未知の蛋白ということになります。皮肉なことですが、血友病Aの患者さんに治療目的で第VIII因子製剤を輸注しますと、第VIII因子に対する抗体ができてしまうのです。第VIII因子製剤の治療効果が激減してしまいますので、厄介な合併症なのです。
血友病Aは原則として男性のみの疾患ですので、この病態も男性でのみ見られることになります。
2) 後天性血友病
2つ目は、先天性の血友病とは全く関係なく、第VIII因子に対する抗体が出現する病態です。
後の記事で詳しく書かせていただきますが、悪性腫瘍、膠原病、高齢、出産などが原因となって、第VIII因子に対する抗体が出現するために、高度な出血傾向をきたします。
この場合の抗体は、自己抗体です。そしてこの疾患を、後天性血友病と言います。先天性の血友病Aとは無関係ですので、男性にも女性にも発症します。
後天性血友病は、最近何かと話題になっていますので、シリーズで記事を連載していきたいと思います。
1)2)の共通点
・出血症状がみられること。
・活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長すること。
・第VIII因子インヒビターの場合:凝固第VIII因子活性が低下すること。
・第VIII因子製剤が無効であること。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:28| 出血性疾患 | コメント(0)