フィブリノゲン製剤の安全性
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「フィブリノゲン製剤の安全性:27年以上の市販後調査の解析」
著者名:Solomon C, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 113: 759-771, 2015.
<論文の要旨>
止血剤としてのフィブリノゲン製剤の使用に関しては、その検討が増えています。
著者らは、Haemocomplettan P/RiaSTAPの市販後調査期間中に生じた薬物副作用(ADRs)の自主的な報告について評価して、また文献として報告されている安全性情報をまとめました。
CSLベーリング市販後調査データベース(1986年1月〜2013年12月)に基づいて分析されました。
同期間中に発表された臨床研究のレビューも行いました。
その結果、フィブリノゲン製剤は上記期間中2,611,294g流通したことが明らかになり、1回4gの標準量を使用したと仮定すると、652,824回投与されたことになりました。
106症例で383回のADRsが報告されました(24,600g投与につき1回、または標準量使用の場合6,200回の投与につき1回)。
特記すべき点は、過敏性反応の可能性が20例(130,600gまたは32,600回投与につき1回)、血栓塞栓症の可能性が28例(93,300gまたは23,300回投与につき1回)、ウイルス感染症が示唆された21例(124,300または31,000回投与につき1回)が報告されていたことです。
ウイルス感染症が示唆されたうち1例では不十分なデータのために解析できませんでしたが、その他の例ではPCR法などにより因果関係は否定されました。
公表された論文からも、類似した安全性のプロフィールでした。
以上、市販後調査でのADRsは過少報告されやすいことに限界があるものの、フィブリノゲン製剤は多くの疾患で使用されているもののADRsはほとんどなく、血栓塞栓症の発症率も少ないと考えられました。
フィブリノゲン製剤は、十分に安全なプロフィールを示していると考えられました。
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ITPに対するトロンボポエチン受容体作動薬中止後の寛解維持
論文紹介です。
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「慢性ITPに対するトロンボポエチン受容体作動薬の中止後の寛解維持」
著者名:Červinek L, et al.
雑誌名:Int J Hematol 102: 7-11, 2015.
<論文の要旨>
トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RAs)は、免疫性血小板減少症(ITP)に対して極めて有効です。
最近、成人ITPに対するTPO-RAの中止後にも寛解が維持されるという報告がみられています。
著者らは、TPO-RAの治療効果が持続する患者の特徴について検討しました。
TPO-RAsで治療された成人ITP患者のすべてを対象として、治療効果がみられたためにTPO-RA治療が中止された症例に焦点を当てました。
再発または難治性ITP46症例がTPO-RAsで治療されました。
これらの症例のうち11例(ロミプロスチム 7例、エルトロンボパグ 4例)において、治療効果がみられた後にTPO-RA治療が中止されました。
TPO-RAsの副作用はみられませんでした。
これらの患者は、TPO-RAの投与前に1〜3種類の治療歴があり、6例では摘脾術も行われていました。
また、中央値33ヶ月(16-54)の経過観察中、TPO-RA治療中止後の再燃はみられませんでした。
TPO-RAsによる治療を受けたITP患者の相当例において、治療中止後の寛解を維持するものと考えられました。
また、このITP寛解の持続は、以前の治療内容、摘脾術の有無、罹病期間に依存しないものと考えられました。
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慢性難治性の自己免疫性出血病FXIII/13
論文紹介です。
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「臨床的寛解3年間後の出血で死亡した慢性難治性の自己免疫性出血病FXIII/13患者の報告」
著者名:Kotake T, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 598-602, 2015.
<論文の要旨>
第XIII因子に対する自己抗体が出現することで発症する自己免疫性出血病FXIII/13(AH13)は、これまでは稀な疾患と考えられてきましたが、少なくとも日本では21世紀になって増加してきています。
83歳の女性が、原因不明の筋肉内血腫と高度の貧血のために著者らの病院に入院しました。
患者のFXIII活性は、正常値の10%にまで減少していました。
FXIIIインヒビターおよびFXIIIサブユニットAに対する自己抗体が検出されたため、患者はAH13と確定診断されました。
心膜出血による心タンポナーデを発症したにもかかわらず、リツキシマブとシクロホスファミドによる免疫抑制療法とFXIII濃縮製剤による止血治療によって、臨床的にはAH13から回復しました。
しかし、患者のFXIII活性は低値が持続して、入院5年後に出血のため死亡しました。
以上、AH13は慢性の難治性出血性疾患になりやすく、長期間にわたって十分に管理する必要があると考えられました。
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血小板減少症:ITP鑑別とIPF%またはRP%
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「骨髄産生低下による血小板減少症とITPの鑑別におけるIPF%またはRP%測定の意義」
著者名:Sakuragi M, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 369-375, 2015.
<論文の要旨>
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の診断は、鑑別診断に基づいて行われています。
フローサイトメトリーによる網状血小板(RP)割合の測定(%)は、補助診断検査として有用ですが、この方法は時間を要する研究室レベルの検査です。
日々の臨床に有用な代替アッセイを検討するために、著者らは以下の3つの方法を比較しました:1)幼若血小板比率(IPF %)(XE-2100、シスメックス)、2)新しいXN-1000により測定されたIPF%(XN)、3)RP %。
対象は、ITP47例、骨髄産生抑制による血小板減少症28例(再生不良性貧血18例、化学療法に伴う血小板減少症10例)、健常対照80例です。
溶血の影響を調べるために発作性夜間血色素尿症(PNH)16例の検討も加えました。
その結果、IPF%(XN)はIPF%(XE)と比較すると、より良い同時再現性を示しました。
ITP診断のための感度と特異度は、IPF %(XE)は83.0、75.0%、IPF%(XN)は85.1、89.3%、RP%は93.6、89.3%でした。
PNH患者の検討では、溶血または赤血球破砕はIPF%(XE)には影響を与えましたが、IFP%(XN)には影響を与えませんでした。
以上、ITPの補助診断検査として、XN-1000によるIPF%の測定は、RP%に匹敵する価値を有するものと考えられました。
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ITP診断時リンパ球数:ピロリ菌除菌療法の効果
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「ITP治療における診断時リンパ球数の意義:ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数と治療成功との関係」
著者名:Nagata A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 268-272, 2015.
<論文の要旨>
免疫性血小板減少症(ITP)は、血小板数減少、血小板破壊の亢進、特異的自己抗体による血小板産生の阻害によって特徴付けられる後天性疾患す。
以前の研究では、ピロリ菌の除菌療法を行うと、ITPは改善すると報告されています。
著者らは、ITPの初期治療と、診断時リンパ球数との関係を検討しました。
対象は、成人ITP患者52例です(1998年3月〜2013年3月)。
標準的なピロリ除菌療法が31人の患者に行われ、この治療の前後のリンパ球数を比較しました。
ITP診断時には、ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数は、ピロリ菌陰性患者に比べて有意に高い結果でした(1.92±0.68×109/ L vs.1.42±0.67×109/ L; p = 0.010)。
除菌療法は6/11例(54.5%)で成功し、血小板数は除菌療法が行われた4/11例(36.4%)で増加しました。
一方、除菌療法はピロリ菌感染のない15例でも行われ、9/15例で反応がみられました。
また、除菌療法によってITP完全寛解とならなかった患者よりも完全寛解となった患者で、リンパ球数は有意に高かったです(2.4±0.59×109/ L vs. 1.37±0.60×109/ L、P = 0.0023)。
以上、ITP患者における初期治療の反応性は、診断時のリンパ球数を測定することによって予測可能と考えられました。
リンパ球サブセットやサイトカインネットワークに関しては、今後の検討課題です。
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ITP:TPO受容体作動薬への変更
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「ITPにおいてTPO受容体作動薬に変更した場合の臨床転帰」
著者名: González-Porras JR, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 111-116, 2015.
<論文の要旨>
慢性免疫性血小板減少症(ITP)患者において、副腎皮質ステロイド、リツキシマブ、他のトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)から変更されて、現在エルトロンボパグあるいはロミプロスチムで治療されている場合の、実臨床における治療パターンや臨床転帰について検討した報告です。
対象はITP280例であり、変更後治療の内訳はエルトロンボパグ治療中が130例、ロミプロスチム治療中が150例です。
有効性に関連する問題(期待する血小板数の増加がみられないまたは前治療への反応の欠如)が、すべての患者で治療変更の主な理由でした(エルトロンボパグ54%、ロミプロスチム57%)。
最後の来院時の血小板数は、エルトロンボパグ治療、ロミプロスチム治療のいずれであっても、それらの薬物による治療開始時の血小板数と比較して改善していました。
エルトロンボパグ治療とロミプロスチム治療間において臨床転帰には有意差はみられませんでした。
以上、著者らの検討結果は、最初のTPO-RA治療で効果が不十分な場合、他のTPO-RAへの切り替えが有益である場合があり得ることを示していました。
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ITP:ロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更
論文紹介です。
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「ITP患者におけるロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更」
著者名: González-Porras JR, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 111-116, 2015.
<論文の要旨>
トロンボポエチン受容体作動薬(THPO-RAs)であるロミプロスチムとエルトロンボパグは、免疫性血小板減少症(ITP)に対して有効かつ安全な治療薬です。
しかし、治療反応が得られなかった場合や有害事象が出現した場合に、一方のTHPO-RAsから他方のTHPO-RAsに変更して引き続き加療を行うことの意義については明らかになっていません。
著者らは、ロミプロスチムで治療された後にエルトロンボパグでの治療に変更されたITP成人患者51名について、後方視的に検討を行いました。
年齢の中央値は、49歳(18〜83歳)、性別は女性32名と男性19名でした。
エルトロンボパグに切り替える前に、ロミプロスチム使用期間の中央値は12ヶ月でした(四分位範囲:5〜21ヶ月)。
切り替えの理由は、無効(n = 25)、患者の希望(n = 16)、血小板数の変動(n = 6)、副作用(n = 4)でした。
その結果、エルトロンボパグに反応した症例は80%(41/51)であり、そのうち完全寛解が67%(n = 35)含まれていました。
中央値14ヶ月の経過観察において、31人の患者では、治療効果が継続していました。
患者の希望、血小板数の変動、副作用が理由で変更した患者においても有効性は維持されていました。
患者のうち33%では、エルトロンボパグ治療中に1つ以上の有害事象がみられました。
以上、ITP患者においてロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更は有効かつ安全であると考えられました。
エルトロンボパグへの反応性は、ロミプロスチム中止の原因に関連していました。
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しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編:NOAC他
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「しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編」
著者名: 朝倉英策
出版会社名:中外医学社, 2015.
<論文の要旨>
(序文より)
寝転びながらでも読めるのに血栓止血学がしみじみ分かるをモットーにして、Vol.1 DIC・血液凝固検査編が発刊されました。
幸い多くの方にお求めいただき、分かりやすい、堅苦しくなくどんどん読み進むことができるなどのご感想をいただきました。
ありがとうございます。
A5サイズでコンパクトな書籍だったのも、持ち運びに便利だったようです。
この度、Vol.2血栓症・抗血栓療法編発刊の機会をいただきました。
Vol.1では、DICや血液凝固検査を取り上げた関係で、おそらく血液内科医、臨床検査技師、研修医、医学生の皆さんに手にしていただいたのではないかと思います。
Vol.2では、血栓症、抗血栓療法を取り上げていますので、上記の方々以外にも多くの領域の皆様にご興味を持っていただけるのではないかと思っています。
また、おそらく半分程度の記事は、医療関係者ではなく一般の方にもお読みいただけるのではないかと思います。
抗凝固療法凝固花盛りの時代になっていますが、多くの皆様が関心をもたれている新規経口抗凝固薬(NOAC)関しても十分に誌面を割いて、記事にさせていただいています。
日本において、血栓止血学の楽しさをしみじみ分かる人が増えることを願っています。
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液専門医テキスト(改訂第2版):日本血液学会
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「血液専門医テキスト(改訂第2版)」
著者名: 日本血液学会
出版会社名:南江堂, 2015.
<論文の要旨>
本テキストは、血液臨床医にとっての実用書であるとともに、これから血液専門医を目指す医師にとっても指針となりうるよう編集されている。
巻末には過去の代表的な問題を記載して簡単な解説を加えてある。
さらには、小児科領域の「小児の造血器悪性腫瘍」や「形態学」で多数の病理像を示すなど、血液専門医に必要な知識を余すところなく盛り込んでいる。
血栓・止血疾患としては、血友病、von Willebrand病、先天性凝固・抗凝固因子欠損症、先天性血小板減少症・機能異常症、ITP、血管性紫斑病などが取り上げられている。
2011年に第1版が出ているが、その改訂版である。
<リンク>
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止血・血栓ハンドブック
論文紹介です。
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「止血・血栓ハンドブック」
著者名: 鈴木重統、他。
出版会社名:西村書店, 2015.
<論文の要旨>
(序文より抜粋)
わが国が世界で有数の長寿国と認められてからすでに久しいが、止血と血栓に関する研究の成果もその一翼を担っていることは明らかであろう。
それとともに血液凝固、線溶、血小板を中心とする止血・血栓学がすっかり面目を改めたことも事実である。
かつて血栓症がわが国には珍しかった40年前、ドイツに留学し、かの地では術後の血栓症予防のためにヘパリンを術前・術中・術後に予防的にルチンに投与し第X因子の活性化を抑制しているという現場に驚きをうけたが、ヘパリンを投与しても予期に反して血栓症が惹起される症例があるという臨床の奥深さはもっと衝撃的であった。
疾患の発生機序の解明に次いですぐ問題となるのは治療法であるが、「血栓・止血」ないし「凝固・線溶」は、究極のところ「止血すると同時に血液の流動性を保つ」という「生体防御」の範疇に入ることは明らかである。当然のことながらこの過程において血小板の果たす役割は大である。
このような凝固・線溶・血小板の研究および臨床に携わる70名に余るエキスパートがそれぞれの立場でわかりやすく条理を尽くして執筆していただいたことは感謝にたえないが、特に畏敬するドイツのB.Potzsch教授(ボン大学免疫・輸血部門)からも玉稿をいただいたことに改めてお礼を申し上げたい。
こうした流れのなかで妊娠・分娩・産褥のいわゆる「リプロダクション」は2つの生命をあずかるという意味でカテゴリーを異にするものであろうという編者の信念から、新たに章を興した。
<リンク>
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ITPに合併した後天性von Willebrand症候群
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「ITPに合併した抗VWF抗体によるvon Willebrand症候群」
著者名:井原章裕、他。
雑誌名:臨床血液 56: 901-904, 2015.
<論文の要旨>
後天性von Willebrand syndrome (以下AVWS)は、先天性VWD類似の稀な疾患です。
著者らは、血小板数3.2万/μlで著明な出血傾向を示した特発性血小板減少紫斑症(ITP)に合併したAVWSの1例を報告しています。
症例は76歳女性。
脳梗塞後遺症経過中ITPを発症1年後、全身の著明な出血傾向を示しました。
第VII因子活性22%、VWF:RCo<6%、VWF:Ag 276%、第XIII因子活性42%、VWF large mulitimer(±)。
ELISA法でIgG1とIgG4の抗VWF抗体を検出、ITPに合併したAVWSと診断し、プレドニゾロン20mg/日開始後VWFは正常化、血小板数は増加しませんでしたが出血傾向は消失しました。
AVWSはリンパ増殖性疾患、骨髄増殖性疾患、心血管疾患に多いといわれ、ITPでの報告はありません。
本症例は、原因不明の第XIII因子欠乏症も合併した稀な例です。
SLEに合併したAVWSは世界で9例しか報告がないです。
本症例は、SLEの診断基準に入らずITPと診断しました。
ITPに合併したAVWSは初めての報告です。
本症例はVWF活性が上昇後出血傾向は消失し、第XIII因子に変化はありませんでした。
第XIII因子活性は、25%程度あれば出血はないといわれており本症例の出血傾向は第XIII因子低下によるものではないと考えられます。
本例は病歴から早い時期に抗VWF抗体が出現したと考えられ、このような症例で軽い出血傾向の場合見逃されると考えられ、積極的止血検査が必要です。
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FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体ACE910と血友病A治療
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「FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体による新規血友病A治療」
著者名:嶋緑倫
雑誌名:臨床血液 56: 623-631, 2015.
<論文の要旨>
血友病Aの未解決の課題は、頻回の経静脈投与、インヒビター陽性例の治療と高額な医療費です。
これらの課題を解決するためにヒト型バイスぺシフィック抗体(ACE910)が開発されました。
本抗体は一方がFIXa、もう一方がFXを認識して両因子を反応しやすい位置関係に維持することによりFVIII代替作用を有します。
サル後天性血友病AモデルにおいてACE910は進行中の出血のみならず自然関節出血に対しても有効でした。
ACE910の薬物動態、薬効および安全性を明らかにするために健常人計64名、血友病A患者18名を対象に第1相臨床試験が我が国で実施されました。
半減期は約30日で、ACE910に関連する重篤な有害事象は見られませんでした。
さらに、ACE910の週1回の皮下投与により出血回数はインヒビターの有無にかかわらず激減しました。
ACE910は長時間作用するために1〜2週毎の皮下投与で、インヒビターの有無に関係なく出血を予防できる長所があるため、血友病患者のQOLが著明に向上する可能性があります。
バイスぺシフィック抗体、ACE910は皮下投与が可能で、半減期が30日と従来のFVIII製剤に比して著明に長く、1〜2週毎の皮下投与で関節内出血が予防できます。
しかもインヒビターの存在下でも同様の効果を呈し、インヒビター出現の危険性もありません。
また、投与の便宜性も高く、出血回数の減少のみならず患者のQOLを各段に向上することが期待されます。
したがって、本製剤は診断後早期から第一選択の治療製剤として使用することが期待されます。
現時点で製剤に起因する有害事象はみられていませんが、抗ACE910抗体が発生する可能性は他の抗体製剤と同様に否定できません。
しかしながら、抗ACE910抗体が発生した場合でも血液凝固機能に影響は与えず、従来のFVIII製剤による補充療法は有効です。
今後の大規模かつ長期間の臨床試験の成績が待たれます。
なお、バイスぺシフィック抗体はカニクイザルを用いた後天性血友病Aの出血モデルで有効性が確認されたことからも後天性血友病Aの新たな治療製剤としての臨床応用も期待されます。
<リンク>
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骨髄腫に対するレナリドマイドと後天性血友病A
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「MMに対するlenalidomide投与中に発症した後天性血友病A」
著者名:佐分利益穂、他。
雑誌名:臨床血液 56: 496-500, 2015.
<論文の要旨>
症例は67歳、女性。2009年に貧血、骨病変を認め、症候性多発性骨髄腫IgA-λと診断。Bortezomib, DEX療法後に再発し、2012年にlenalidomide (Len), DEX, CPAで治療を行いました。
10日目に血清クレアチニンが上昇し、Lenを休薬しましたが、APTTが治療開始前の33.7秒から89.5秒に延長していました。
Mixing test でinhibitor patternを示し、FVIII 2%、FVIII inhibitor(INH) 4.85 BU/mlであり後天性血友病Aと診断。
PSLを投与し、INH 1.09BU/mlまで低下しました。
Lenの休薬で血清Crは改善し、Lenの投与を再開したが、INHが再上昇しました。
Lenを中止し、PSL増量、CPA併用でINHは4ヶ月後に消失しました。
Len開始と共にINHが出現し、再投与でINHが上昇した経過からLenによる薬剤性後天性血友病A(AHA)が疑われました。
AHAは重篤な出血を来す自己免疫疾患であり、これまでLen投与と関連が疑われた報告例はなく、稀ながら注意すべき病態です。
薬剤性に関しては、penicillinなどの抗菌薬、phenytoinなどの抗痙攣薬、fludarabine、interferon αなどの報告があります。
これまでLenとの関連が疑われた報告はなく、本例ではLen投与前に正常であったAPTTが投与開始10日後に延長し、PSL投与でINHは低下しましたが、Len再投与でINHは再上昇しました。
免疫抑制療法を中止後、MMが無治療で病勢が進行した後にINHが上昇しなかった経過からも、MMがAHAの原因となった可能性は低く、また他に原因となりうる薬剤の開始や他の悪性腫瘍の合併はなく、Lenによる薬剤起因性のAHAである可能性が高いと考えられました。
実際に、Lenに伴う自己免疫疾患の報告は、血小板減少性紫斑病、心筋炎、バセドウ病、自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症など多岐に渡り、Len開始後1ヶ月以内の発症が多いとされています。
AHAは致死的出血を来す病態であり、Len内服中、特に内服開始後1ヶ月以内は慎重に凝固系のスクリーニングを行い、また原因不明の出血症状を来した際にはAHAの可能性も考慮する必要があります。
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後天性血友病AとFVIII&低用量rFVIIa併用療法
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「FVIII&低用量rFVIIa併用療法は後天性血友病A患者における止血を改善する」
著者名:Zhang XH, et al.
雑誌名:Thromb Res 135: 835-40, 2015.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、潜在的に重度の出血につながり、死亡率が高い自己免疫性疾患です。
この共同研究は、AHA患者におけるFVIIIおよび低用量rFVIIaの併用療法の効果を評価することを目的に行われました。
本研究では、FVIII /低用量rFVIIa併用療法(初回用量:25-55μg/ kg)を、FVIII/PCC併用療法や低用量rFVIIa単独療法と後方視的に比較しました。
副作用や再発性出血も調査しました。
これら3群の治療結果を比較するために、粗比較や条件付きロジスティック回帰解析を行いました。
5センターからの連続した患者56例の最初の出血エピソードを分析した結果、37出血エピソード(66.1%)が重症と診断されました。
特記すべきは、低用量rFVIIa単独療法またはFVIII / PCC療法に比較して、FVIII /低用量rFVIIa併用療法で有意に出血のコントロール率が高かったことです(それぞれ、58.3%、41.7%、95.0%)。
出血エピソード合計236回の分析の結果、止血治療の有効性と早期治療開始との間に明らかな正相関がみられたました。
血栓症などの治療関連有害事象は報告されませんでした。
以上、FVIIIおよび低用量rFVIIa併用療法は、理想的な止血効果を発揮して、AHA患者のための実現可能かつ安全な治療プロトコールとして推進されて良いものと考えられました。
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非重症血友病A患者インヒビターとインヒビター除去治療
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「非重症血友病A患者におけるインヒビター/転帰とインヒビター除去治療戦略」
著者名:van Velzen AS, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 114: 46-55, 2015.
<論文の要旨>
非重症の血友病A(HA)患者では、インヒビターを発症すると、出血症状は劇的に悪化します。
これらの患者においてインヒビター除去のための至適治療についてはほとんどデータがありません。
著者らは、インヒビター保有非重症HA患者におけるインヒビター除去治療について検討しました。
欧州およびオーストラリアで治療された非重症 HA患者2709名(第VIII因子2-40 IU / DL)のうち、101名ではインヒビターを保有していました(平均中央値37歳、インヒビターピーク力価中央値77BU/ml)。
大多数の患者(71%; 72/101)において、インヒビターは消失していました(自発消失70%、51/73; 除去治療の後75%、21/28)。
インヒビター除去治療戦略は多彩であり、免疫寛容誘導も免疫抑制も行われていました。
永続的な成功(インヒビター消失後に第VIII因子製剤を再投与してもインヒビターが出現しない)は、64%(30/47名)で達成されました。
高力価のインヒビター保有患者では、インヒビター除去治療をすることで初めて永続的なインヒビター消失がみられました。
以上、非重症HA患者では多くの場合インヒビターが自然に消失しますが、再投与すると35%(25/72)の症例で再度インヒビターが出現するため、これらの患者におけるインヒビター消失は、永続的な消失を意味している訳ではありません。
症例によっては、インヒビター除去治療が必要です。
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血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類
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「血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類:欧州血友病安全性監視(EUHASS)プロジェクト4年間の結果」
著者名:Fischer K, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 113: 968-975, 2015.
<論文の要旨>
インヒビター発症は、血友病治療の最も深刻な副作用です。
使用する製剤によってインヒビター発症率が異なるかどうかは、臨床的に関心のあるところです。
著者らは、重症血友病AとBにおいて、凝固因子製剤によってインヒビター発症率が異なっているかどうか検討しました。
製剤ごとの有害事象全体をモニターするために、欧州血友病安全性監視(EUHASS)が立ち上げられました。
2008年10月から、インヒビターについては少なくとも年4回報告されました。
治療をうけている患者数は毎年報告され、インヒビターの発症なく50回の投与(未治療患者(PUPs))を完了した患者数を特定しました。
68センターにおいて、2008年10月1日から2012年12月31日までのデータが分析されました。
インヒビターは、重症血友病A PUPsの 108/417(26%)で発症して、重症血友病B PUPsの5/72(7%)で発症しました。
既治療患者(PTPs)に関しては、重症血友病Aでは17,667治療・年で26例のインヒビター発症がみられ、重症血友病Bでは1/2,836のインヒビター発症がみられました。
血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤間の差違、各種遺伝子組換え製剤間の差違も検討されました。
結論としては、PUPsとPTPsでインヒビター発症率を確認したところ、製剤の種類による違いは観察されませんでした。
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非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率
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「非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率」
著者名:Eckhardt CL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 13: 1217-1225, 2015.
<論文の要旨>
非重症の血友病A(HA)患者の平均余命は、非血友病者の平均寿命と同等です。
しかし、インヒビターを発症した場合の、死亡率や血友病関連死因に対する影響に関するデータは不足しています。
非重症HA患者にインヒビターを発症すると、出血性合併症が重症となるために、臨床転帰は劇的に変化します。
著者らは、非重症HA患者におけるインヒビター発症と死亡率との関連を評価しました。
臨床データは、ヨーロッパとオーストラリアの34医療機関で1980年から2011年の間に治療を受けた非重症HA患者2709名(インヒビター保有者107名)から収集しました。
インヒビター保有の有無で患者死亡率を比較しました。
その結果、追跡期間64,200人・年の間に、148人の患者が死亡しました(死亡率:2.30/1000人・年、中央値年齢:64歳)。
62名(42%)の死因は血友病関連でした。
インヒビター保有患者16名が、中央値年齢71歳で死亡しました。
10名では死亡時にインヒビターが存在していました(7例は重症出血が死因でした)。
インヒビター保有患者での全死因の死亡率は、非保有患者と比較して5倍以上でした。
以上、非重症血友病におけるインヒビター発症は、死亡率の増加と関連していました。
また、非重症血友病において血友病関連の死亡率が高いことは、非重症血友病でも決して軽症と言う訳ではなく、これらの患者でも注意深い経過観察が必要と考えられました。
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免疫寛容導入療法の国際研究およびインヒビター保有血友病A
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「免疫寛容導入療法の国際研究およびインヒビター保有血友病Aの日本患者におけるフォローアップ研究」
著者名:Yoshioka A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 362-368, 2015.
<論文の要旨>
インヒビター保有血友病A患者における免疫寛容導入療法(I-ITI)の国際研究は、115名の被験者の合計のうち、16名の日本人患者が含まれていました。
これらの日本人患者の結果は、I-ITI臨床研究終了11例、I-ITI臨床研究継続中 3例、予防治療に寛容2例でした。
低用量群と高用量群との間には、成功率に有意差はみられませんでした(臨床試験I)。
続いて、同意が得られた14症例において日本の独立した追跡調査が行われました(臨床試験II)。
10例は、I-ITI研究終了時に臨床研究が終了していました。
これら10例のうち、7例の成功例のうち7例が追跡調査の終了時点でも臨床的成功状態を維持しており、部分的な成功状態だった1例は2回目の再発中に完全成功状態となり、失敗した1例はその後に部分的な成功例と診断されました。
I-ITI研究終了時に、臨床試験中であった4症例は、追跡調査研究終了時点で、3例は成功、1例は失敗と評価されました。
以上、追跡調査の終了時点で以下の結果となりました: ITI成功11例(78.6%)、部分的成功1例、失敗1例、再発1例。
このように、ITIの追跡調査は、インヒビターの長期予後を知るのに有用であった。
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血友病Aキャリアにおける出血症状
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「血友病Aキャリアにおける出血表現型の横断的研究」
著者名:Paroskie A, et al.
雑誌名:Br J Haematol 170: 223-228, 2015.
<論文の要旨>
血友病Aキャリヤーは、通常の止血を示すと歴史的には考えられてきました。
しかし、最近の報告では、第VIII因子活性(FVIII)が正常であるにもかかわらず、血友病Aキャリヤーは出血傾向をきたすとされています。
著者らは、血友病キャリヤーでは臨床的に意義のある出血が増えるという仮説を検証しました。
血友病Aキャリヤーと通常の女性と比較する横断的研究が行われました。
アンケート調査は、general bleeding questionnaire、condensed MCMDM-1VWD bleeding assessment tool、Pictorial Bleeding Assessment Chart (PBAC)で行われました。
臨床検査的評価は、血算、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノゲン、第VIII因子活性(FVIII:C)、von Willebrand因子抗原量、リストセチンコファクター活性、血小板凝集能、血液型(ABO)で行われました。
対象は、血友病Aキャリヤー44名と健常女性43名です。
臨床検査的評価では、唯一第VIII因子活性のみが統計的に有意差を示しました(82.5対134%、P < 0.001)。
全てのアンケート調査において、血友病Aキャリヤーでは有意に出血が多いことが示されました。
以上、健常女性と比較しますと、血友病Aキャリヤーは出血性症状が多いことが示されました。
血友病Aキャリヤーにおける出血表現型を十分に理解して、適切な管理を行うためには、更なる検討が必要と考えられました。
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血友病治療と半減期の長い第VIII&IX因子製剤
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「血友病治療における半減期の長い第VIII因子製剤と第IX因子製剤の意義」
著者名:Mahdi AJ, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 768-776, 2015.
<論文の要旨>
先天性血友病は、第VIIIまたは第IX因子製剤よる、頻回の輸注をしばしば必要とします。
効果的な輸注計画を確立するためには、頻回の輸注は不可欠でした。
これらの問題を解決するために、ポリエチレングリコール、Fc-neonatal IgG1、アルブミン融合製剤といった3つの主要な技術開発が行われ、各種の臨床開発段階にあります。
これまでの報告によると、上記の新しく開発された第VIII因子および第IX因子製剤の半減期は、標準的な遺伝子組換え製剤に比べて、それぞれ約1.5倍、5倍と延長しています。
これらの有効性と安全性に関する臨床研究の結果が、論文として発表され始めています。
ただし、これらの新しい製剤のモニタリング法と最適使用法は、まだ不明です。
血友病Bでは、第IX因子製剤を毎週1回による治療は、患者の予防治療レジメになるものと考えられます。
血友病Aでは、半減期の長い第VIII因子製剤であっても、毎週1回のみではほとんどの場合は十分な予防治療にはなりませんが、輸注頻度を減らすことが可能です。
現在進行中の臨床試験や実臨床経験の蓄積によって、これらの製剤の有用かつ費用対効果の良い投与法が考案されるようになるでしょう。
しかし、投与回数が少なくなって便利ではあっても、本来の治療目標すなわち出血や関節症を阻止するという目標が忘れられてはいけません。
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