後天性血友病(7):APTT混合試験の例
前回記事(後天性血友病(6):止血治療、免疫抑制療法)からの続きです。
【症例でのAPTT混合試験】
上図は、後天性血友病の患者さんの、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)クロスミキシングテスト(混合試験)の結果です。
縦軸は、APTT(秒)です。
横軸は、患者血漿比率(%)と書かれていますが、次の混合血漿であることを示しています。
患者血漿比率(%)
100 → 患者血漿:正常血漿=10:0
80 → 8:2
50 → 5:5
20 → 2:8
0 → 0:10
さて、患者血漿と正常血漿の混合直後の成績はどうでしょうか。
混合曲線は下に凸になっていますので、Deficiency patternという評価になってしまいます。もし直後の成績しか見ませんと、Deficiency patternを来す疾患・病態(肝不全、肝硬変、ビタミンK欠乏症、血友病A&B、von Willebrand病など)を考えてしまうでしょう。
しかし、全く同じ検体で2時間incubationを加えますと、この混合曲線は上に凸のInhibitor patternに変貌いたします。
クロスミキシング試験は、その後の診断を進めていく上での分岐点に位置する極めて重要な検査です。この分岐点での判断を誤ってはいけません。2時間incubationも加えた混合試験を行うことの重要性を深く認識したいところです。
なお、上図の症例では、第VIII因子インヒビターの力価は、64 B.U.(ベセスダ単位)とかなりの高力価です。このような高力価の症例であっても、混合直後ではDeficiency patternになってしまうことを、もう一度強調しておきたいと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:58| 出血性疾患 | コメント(0)