金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月13日

金沢大学血液内科過去問題:アスピリン、ワーファリン、ヘパリンなど

金沢大学血液内科過去問題の解説:TTP、HUS、HELLPなどから続く


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血栓止血の臨床に関する記載として正しいはどれか.1つ選べ.

a. 心房細動症例における脳塞栓予防を目的とした抗血栓療法としては,アスピリンが第一選択である.

b. 閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する抗血栓療法としては,ワルファリンが第一選択である.

c. 冠動脈ステント留置後の抗血栓療法としては,ワルファリンが第一選択である.

d. 線溶療法を行うと血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が上昇する.

e. ヘパリンはアンチトロンビン非依存性に抗凝固活性を発揮する.
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抗血栓療法
は、以下のように分類されます。


抗血栓療法の種類

1)    抗血小板療法:アスピリンなど
2)    抗凝固療法:ワルファリン(商品名:ワーファリン)など。
3)    線溶療法:ウロキナーゼ、t-PAなど。



抗血小板療法(アスピリンなど)
・ 血流が速い場合(動脈血栓)には、血小板活性化(血小板血栓)がみられます。
・ 血小板の含有量が多く、生じた血栓は白色血栓とも言われます(血小板が病理学的に白く見えるのです)。
・ 抗血小板療法は、血小板活性化が主病態である脳梗塞(心原性脳塞栓を除く)、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症(→血栓症)に対して有効です。


抗凝固療法(ワルファリンなど)

・ 血流が遅い場合(静脈血栓)には、凝固活性化(凝固血栓)がみられます。
・ フィブリンの含有量が多く、また血流が遅いために赤血球も多くまきこんで、生じた血栓は赤色血栓とも言われます(赤血球が病理学的に赤く見えるのです)。
・ 抗凝固療法は、凝固活性化が主病態である、心原性脳塞栓、深部静脈血栓症、肺塞栓に対して有効です(深部静脈血栓症/肺塞栓(インデックスページ))。心原性脳塞栓は、心房細動が原因となって脳動脈に塞栓をきたします。閉塞する場所は脳動脈ですが、血栓が形成される原因は心房細動が原因の心臓内血液滞留ですので、凝固血栓の性格を有します。ですからワーファリンが有効なのです。PT-INRでコントロールします。
・なお、抗凝固療法薬のうち、ワルファリンは内服薬ですが、注射薬にはヘパリン類があります。


ですから、以下が正しいです。
・ 心房細動症例における脳塞栓予防を目的とした抗血栓療法→ワルファリンが第一選択.
・ 閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する抗血栓療法としては→アスピリンが第一選択.ワーファリンは出血の副作用を増加させるのみで、効果はアップしない。
・ 冠動脈ステント留置後の抗血栓療法→アスピリンが第一選択.
アスピリンとワーファリンの使い分けはとても重要です。


さて、線溶療法を行うと血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が上昇することが知られています。つまり、線溶療法によってかえって凝固活性化をきたすことになります。線溶療法後の再閉塞の一因と考えられています。これはちょっと難しい選択肢ですが、次の選択肢が容易なので、当時ほとんどの人が正答していました。

ヘパリンアンチトロンビン依存性に抗凝固活性を発揮します。ですから、アンチトロンビンが存在しませんと、ヘパリンは効かなくなるのです。DICの治療にヘパリンが使用されることがありますが、アンチトロンビン活性が低下していますとヘパリンはあまり効きません。そのような場合には、アンチトロンビン濃縮製剤をヘパリンに併用しています。





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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:10| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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