金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年09月01日

血栓症の治療:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(5)

JAK2遺伝子変異と血栓症:真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症(4) から続く

 

 【PV、ETにおける血栓症の危険因子】


真性赤血球増加症(真性多血症:PV)、本態性血小板血症(ET)における血栓症発症のリスクの程度によって治療方針も変わってきます。

PV、ETのいずれにおいても高齢、および血栓症の既往は血栓症の重要な危険因子と考えられています。また、血栓症を再発する場合であっても、前回と同じ臓器に発症しやすいことも知られています。

一般的な血栓症の危険因子である高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙などが、PV、ETにおける血栓症発症の危険因子になるかどうかについては相反する報告もあり一定の見解はありません。

血液学的所見としては、白血球数高値が動脈・静脈両者の血栓症の危険因子とする報告が多いです。

一方で、ETでは血小板数高値と血栓症との関連を指摘した報告はほとんどありません。

血栓性素因として知られている、アンチトロンビン・プロテインC・プロテインS欠損症、第V因子Leiden、プロトロンビンG20210A、高ホモシステイン血症、抗リン脂質抗体などと血栓症の関連を論じた報告も散見されますが、まだ充分なエビデンスは蓄積されていないのが現状です。


【血栓症治療(予防対策)】

● PVにおいては、血栓症のリスクがそれほど高くない場合、血液粘度を低下させるための瀉血治療が有効です。


● 一方、血栓症のリスクが高い場合には、PV、ETともにヒドロキシウレアが選択肢となります。特にETにおいては、少量アスピリンとヒドロキシウレア併用の有効性が報告されています16)30)。なお、ヒドロキシウレアが抗血栓効果を発揮する理由としては、本薬による白血球数と白血球機能抑制に依存しているのではないかとも考えられています 31)


● アスピリンは、特に動脈血栓症の予防治療薬として、世界中で頻用されている薬物です。PV、ETにおいては、トロンボキサンA2の産生が亢進しているという報告もあり、理論的にもこれらの疾患におけるアスピリンの投与は有用と考えられます。

実際、PV518例を対象にした大規模試験においては、アスピリン100mg/日の内服を行った場合に、出血の副作用なく有意に動・静脈血栓症の発症を抑制したと報告されています 32)

一方で、ET症例(特に血栓症リスクが低いET症例)におけるアスピリンの有用性についてはまだ一定の見解はないのが現状です。


● 手術を契機に、術後血栓症を発症することも少なくありません。

術後にPVでは静脈血栓症を発症しやすく、ETでは動脈血栓症を発症しやすいと報告されています33)

一方で、これらの疾患では術後の出血も少なくないことにも注意が必要です。

術後の血栓症予防目的として、PVではヘパリン類、ETでは抗血小板薬というような使い分けが良い可能性がありますが、この点についてはなお検討すべき課題と思われます。


(続く)

引用(参考)文献:真性赤血球増加症、本態性血小板血症と血栓症(6)




【凝固検査&DIC

1)血液凝固検査入門

2)DIC(図解)

3)DIC(治療ほか)



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:15| 血栓性疾患 | コメント(0)

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