JAK2遺伝子変異、血栓症、脳梗塞:金沢大学統合卒業試験
金沢大学統合卒業試験に出題された問題のなかで、当科の専門領域と関連のある血液内科、呼吸器内科関連の問題についての解説を続けたいと思います。
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設問
68歳の男性。左半身不全麻痺を訴えて来院した。
現病歴:40年来タバコを1日20本。65歳頃から時々ロレツが回らなくなって自然に軽快することが数回あった。昨日農作業のあと左手に力が入らなくなった。
現症:意識は清明。身長164 cm、体重60 kg。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧142/90 mmHg。眼瞼結膜に充血、眼球結膜に黄染なし。心音・呼吸音異常なし。肝1横指、脾1横指触知。左上下肢の腱反射亢進。
検査所見:赤血球643万,Hb 18.7 g/dl、Ht 56%、白血球12,300(分画は正常)、血小板30.2万、総蛋白6.4 g/dl、総コレステロール210 mg/dl。
1)この患者の血液異常を診断するための検査として不要なものはどれか。
a JAK2遺伝子変異の検出
b 血中エリスロポエチン測定
c 動脈血ガス分析
d 骨髄の染色体分析
e メトヘモグロビンの測定
2)この患者に対する治療方針として適切なものはどれか。
a メシル酸イマチニブ
b 瀉血
c 無治療経過観察
d 骨髄非破壊的造血幹細胞移植
e シトシンアラビノシド少量療法
【解説】
<前半>
多血症に対するプライマリーケアを問う問題です。
脳梗塞を疑わせる病歴、眼瞼結膜の充血・肝脾腫などの身体所見から真性赤血球増加症(真性多血症)を疑って検査を勧める必要があります。
aのJAK2遺伝子変異の検出は、どの病院でも実施できるという訳ではありませんが、最近では真性赤血球増加症を積極的に診断するための最も簡便で確実な検査法となっています。
b, cは相対的赤血球増加を除外するために行われます。
dは、慢性骨髄性白血病や、真性赤血球増加症以外の骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患を否定するために必要です。
eのメトヘモグロビンはヘム鉄が酸化されて3価になったもので、後天的には局所麻酔薬やフェナセチンなどの投与によって増加し、チアノーゼや神経症状を引き起こします。多血症とは無関係です。
したがって正解はeです。
<後半>
aは慢性骨髄性白血病に対する治療薬です。
cは、すでに脳梗塞らしき症状を合併していることから不適切です。
この状態の真性赤血球増加症に対しては、治療関連死亡の高いdは適応されません。
eは高齢者の急性骨髄性白血病に対する治療法です。
したがってこの選択肢の中では、正解はbの瀉血となります。
【正答】
2)b
【リンク】
研修医の広場(金沢大学第三内科) ← 当科での研修の様子をご覧いただくことができます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:25| 医師国家試験・専門医試験対策