vWF分解酵素(ADAMTS13)と脳梗塞:TTP以外の意義
最近の論文を紹介させていただきたいと思います。
ADAMTS13と言えば、血液内科では血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と直結しますが、TTPとは違うテーマと関連した論文が報告されています。興味ある論文でしたので、ブログ記事にしたいと思います。
「vWF分解酵素(ADAMTS13)は脳梗塞モデルの虚血性脳障害を軽減する」という論文です。
Blood 114: 3329-3334, 2009.
<論文の概略>
脳梗塞の発症には血小板が重要な働きを演じていますし、炎症反応は神経変性を増強させることが知られています。
また、血小板粘着因子であるvon Willebrand因子(vWF)は、脳梗塞急性期に上昇します。また、vWF活性はADAMTS13(vWFを分解して活性を少なくします)により修飾されます。
この論文の著者らは最近、ADAMTS13は血栓症と炎症に対して阻止的に作用することを報告しています。今回は、vWF活性を消失あるいは低下させることで、マウス脳梗塞モデルにおける梗塞量を1/2以下に低下させることを明らかにして、脳梗塞におけるvWFの重要性を指摘しています。
逆に、ADAMTS13を欠損させたところ、梗塞量は大きくなったと報告しています。
興味あることに、ワイルド型マウスの脳梗塞モデルに対して大量の遺伝子組換えADAMTS13を投与したところ、梗塞量を有意に低下させました。
しかも、遺伝子組換えADAMTS13は、脳出血モデルの出血量を増加させることはありませんでした。
このように、脳梗塞病態にvWFが重要な役割を演じています。遺伝子組換えADAMTS13は新しい脳梗塞治療薬としての展望があるのではないかと考えられたと論じています。
ADAMTS13は、TTPから有名になりましたが、視点を変えて脳梗塞と関連させたという点で、とても興味深いと思いました。
【リンク1】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:06| 血栓性疾患 | コメント(0)