後天性血友病Aと凝血学的検査
血友病と言えば、先天性出血性疾患(血友病A、血友病B)を思い描くのが自然です。しかし、近年は後天性血友病が何かと話題になりやすいのではないかと思います。
関節内出血が特徴的な先天性血友病とは異なり、後天性血友病は皮下出血と筋肉内出血が特徴です。
以下の論文は、これらの疾患の検査に関連した重要な論文ですので、紹介させていただきたいと思います。
「後天性血友病Aに関する凝血学的検査の注意点」
著者名:天野景裕
雑誌名:臨床病理 57: 999-1003, 2009.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、第VIII因子に対する自己抗体が出現する出血性素因です。死亡率7.9〜25%と報告されていますので、迅速かつ正確な診断が求められます。
異常出血の既往のなかった症例で、自然出血をきたしAPTTの延長が確認された時点で本疾患を疑うことになります。次に、第VIII因子活性の低下がみられること、vWF活性の低下がないことを確認し、第VIII因子インヒビター力価を測定します。
APTTの「クロスミキシング試験」は、凝固因子欠損症か、インヒビターかの鑑別に有用です。
第VIII因子インヒビターは時間および温度依存性ですので、混合直後のみならず2時間incubationも行う必要があります。
一部の症例では、内因系凝固機序の全ての凝固因子活性が低下する所見を見ることがありますが、これは第VIII因子が欠損症していることによるartifactです。
ループスアンチコアグラント(LA)でもこのartifactの現象が見られることがあります。このartifactは検体の稀釈を行うことにより解決します。
なお、この論文ではインヒビター力価測定上の注意点、被検血漿中の残存第VIII因子活性に関する注意点などについても詳述されています。
管理人もクロスミキシング試験は、とても重要な検査と認識しています。保険点数もつきましたので、全国の医療機関でもっと行われても良い検査ではないかと思います。
【リンク】
研修医の広場(金沢大学第三内科) ← 当科での研修の様子をご覧いただくことができます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:27| 出血性疾患 | コメント(0)