金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年06月14日

血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)病態

関連リンク:

血液専門医試験対策(DIC)

抗リン脂質抗体症候群(インデックス)



血液専門医試験対策(DIC)のシリーズが完結しましたので、今回からは血液専門医試験対策(抗リン脂質抗体症候群:APS)をお届けしたいと思います。



抗リン脂質抗体症候群(APS)の病態・疫学(血液専門医試験対策)


<病態>


抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は、高頻度に見られる後天性血栓性素因の一つです。

APS診断のためには、抗カルジオリピン抗体(aCL)およびループスアンチコアグラント(LA)検査が不可欠ですので、これらの特殊検査が未施行ですと、APSを見逃す懸念があります(参考:LA測定時の問題点)。

APSの血栓傾向の機序については多くの報告がみられますが、おそらく単一の機序ではないものと思われます。例えば、以下のような報告があります。


抗リン脂質抗体(aPL)が、

1)凝固活性化に対して抑制的に作用するβ2-GP1を阻害する。
2)プロテインC活性化を抑制する。
3)血管内皮細胞に存在する抗凝固性物質トロンボモジュリンやヘパラン硫酸の発現を抑制する。
4)プロスタサイクリン産生を抑制する。
5)血管内皮細胞における組織因子、線溶阻止因子PAI、接着因子の産生を亢進させる。
6)その他。


APSは、SLEなどの膠原病に合併することもありますが、他に明らかな基礎疾患がない場合も多く、
後者を「原発性抗リン脂質抗体症候群(primary antiphospholipid syndrome:PAPS)」、
前者を「二次性抗リン脂質抗体症候群(secondary antiphospholipid syndrome:SAPS)」と称します。


<疫学>


厚労省研究班の疫学調査によりますと、以下のように報告されています。

原発性と二次性の比

PAPS:SAPS = 44.4%:55.6%

平均年齢
PAPS:40.5±13.9歳(7-87歳)
SAPS:41.9±13.6歳(11-97歳)

男:女比
PAPS 19%:81%
SAPS 10%:90%

SAPSの基礎疾患
SLE :78%
SLEと他の疾患の合併:3%
MCTD: 5%
シェーグレン症候群: 4%
慢性関節リウマチ :1%
その他 :9%

上記のように、APSは小児から高齢者までいずれの年齢層の血栓症の基礎疾患にもなりますが、若年者の血栓症(特に脳梗塞に代表される動脈血栓症)の症例では最初に疑う病態の一つです。


(続く)血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)症状  へ



【リンク】

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58| 血栓性疾患 | コメント(0)

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