血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)診断&検査
血液専門医試験対策:抗リン脂質抗体症候群(APS)症状 から続く
関連リンク:
血液専門医試験対策(DIC)
抗リン脂質抗体症候群(インデックス)
抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断&検査(血液専門医試験対策)
<抗リン脂質抗体症候群 分類基準(2006年)>
臨床所見
1.血栓
画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症(血管炎は除く)
2.妊娠合併症
1)妊娠10週以降の胎児奇形のない、1回以上の子宮内胎児死亡。
2)妊娠高血圧症、子癇もしくは胎盤機能不全などによる、1回以上の妊娠34週未満の早産。
3)妊娠10週未満の3回以上連続する原因不明習慣性流産。
検査所見
1. LA陽性:国際血栓止血学会のガイドラインに従う(※)。
2. ACL(IgGまたはIgM型):中等度以上の力価または健常人の99パーセンタイル以上
3. 抗β2-glycoproteinT抗体(IgGまたはIgM型):健常人の99パーセンタイル以上
上記の臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査所見の1項目以上が12週間以上の間隔をあけて2回以上検出された場合を、抗リン脂質抗体症候群(APS) と診断する。
(※)ループスアンチコアグラント
a. リン脂質依存性凝固反応(APTT、カオリン凝固時間、希釈ラッセル蛇毒時間など)の延長がみられる。
b. 混合試験で、凝固時間の延長が是正されない。
c. 高濃度のリン脂質の添加により、凝固時間の延長が是正される。
d. 他の凝固異常(第VIII因子インヒビターなど)が除外できる。
APS分類基準(2006年)(上記)によりますと、臨床症状1項目以上と、aCL、LA、抗β2-グリコプロテインI (抗β2-GPI)抗体のうち1項目以上が、12週間以上の間隔をあけて2回以上検出された場合にAPSと診断されます。
抗リン脂質抗体と血栓症との関連性は、抗体によって様々ですが、血栓症と最も関連性の強い抗体はループスアンチコアグラント(LA)と考えられています。
Galli M, et al: Lupus anticoagulants are stronger risk factors for thrombosis than anticardiolipin antibodies in the antiphospholipid syndrome: a systematic review of the literature. Blood 101: 1827-1832, 2003.
抗β2-GPI抗体も診断的価値が高いですが、IgG型、IgM型ともに保険適用外検査です(本記事執筆時点)。一方、抗カルジオリピン抗体(aCL)は診断基準に取り上げられているものの、血栓症との関連性は乏しいと報告されています。
aCLは定量測定されるのに対して、LAは複数の凝固時間法を用いて総合的に定性診断すること、検体処理法や用いるコントロール血漿により大きく結果が変動しやすいから、残念ながら施設間で測定感度・特異性に相当の差異がみられます。
なお、aCLまたはLAが陽性であっても、臨床症状がない場合は、その時点ではAPSではなく、「抗リン脂質抗体陽性症例」という表現に留まります。
APSの診断と直結する訳ではありませんが、血小板数減少、APTT延長、梅毒反応偽陽性、抗核抗体陽性なども、APSで見られることがあります(見られないことも多いです)。
抗リン脂質抗体陽性症例では、既に無症候性の血栓症を発症していることも少なくなく、発症頻度の高さや重要性も考慮して、脳MRI、下肢静脈エコー、眼底検査、皮膚科診察、心エコーなどの検査を行っておくのが望ましいです。
(続く)
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【リンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| 血栓性疾患 | コメント(0)