aCL、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント:小児APS(2)
【抗リン脂質抗体(anti-phospholipid antibody: aPL)】
抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断に必須の検査項目である抗リン脂質抗体(aPL)とは、リン脂質あるいはリン脂質と蛋白の複合体に結合する自己抗体の総称です(参考:臨床検査からみた血栓症)。
APSと関連するaPLの主な標的抗原は、β2-グリコプロテインI(β2GPI)とプロトロンビンであることが、最近の研究では明らかにされています。
Matsuura E, et al.: Anticardiolipin antibodies recognize β2-glycoprotien I structure altered by interacting with an oxygen modified solid phase surface. J exp Med 179: 457-462, 1994.
Amengual O, et al.: Specificities, properties, and clinical significance of antiprothrombin antibodies. Artheitis Rheum 48: 886-895, 2003.
APS分類基準では、診断的aPL として抗カルジオリピン抗体(aCL)、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント(LA)が取り上げられており、その他にホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)や抗ホスファチジルエタノラミン抗体などの研究レベルのaPLも考慮されています。
<aCLと抗β2GPI抗体>
当初、aCLはリン脂質であるカルジオリピンが直接の標的抗原だと考えられていましたが、現在ではAPSに特異的なaCLと、膠原病(APSを合併しないSLEなど)や感染症患者にみられる非特異的なaCLは、標的抗原が異なることが明らかになっています。
APS患者に検出されるaCLは、カルジオリピンに結合して構造変化を起こしたβ2GPIに結合する自己抗体、すなわちβ2GPI依存性aCLです。
一方、非特異的aCLはβ2GPIの存在とは無関係にカルジオリピンに結合します。
現在測定されているaCLは血栓症状との関連性は低く、aPLのスクリーニング検査としての意味合いが強いです。
Galli M, et al : Lupus anticoagulants are stronger risk factors for thrombosis than anticaldiolipin antibodies in the antiphospholipid syndrome : a systematic review of the literature. Blood 101: 1827-1832, 2003.
一方、抗β2GPI抗体測定は構造変化を起こしたβ2GPIに結合する免疫グロブリンを検出するものですが、この抗体は血栓症状との関連性が強いです。保険収載されていないため、代わりに本邦で開発されたβ2GPI依存性aCLを測定することが多いですが、両者が同一なものであるかどうかは明確ではありません。
<ループスアンチコアグラント>
ループスアンチコアグラント(LA)は、「個々の凝固因子活性を阻害することなく、in vitroのリン脂質依存性凝固反応(APTT、カオリン凝固時間、希釈ラッセル蛇毒時間など)を阻害する免疫グロブリン」と定義されています。
LAは血栓症状と強く関連するaPLです。特に抗β2GPI抗体と同時に検出されるβ2GPI依存性LAが著しく強い関連性を有します(オッズ比42.3)。
Galli M, et al : Lupus anticoagulants are stronger risk factors for thrombosis than anticaldiolipin antibodies in the antiphospholipid syndrome : a systematic review of the literature. Blood 101: 1827-1832, 2003.
LAの責任抗体として、aPS/PTおよび抗β2GPI抗体が考えられていますが、それ以外の抗体の関与も推測されます。
Atsumi T, et al.: Association of autoantibodies against the phosphatidylserine-prothrombin complex with manifestations of the antiphospholipid syndrome and with the presence of lupus anticoagulant. Arthritis Rheum 43: 1982-1993, 2000.
LA陽性者の半数がaPS/PT陽性であり、aPS/PT陽性者は9割以上がLA陽性であり、aPS/PTはLAの補助診断としての意義が高いと考えられます。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16| 血栓性疾患