抗リン脂質抗体症候群とは:小児APS(1)
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome: APS)は、若年者でみられる血栓症の原因疾患の一つという印象が強いかも知れませんが、この病気は全ての年齢層においてみられる疾患です(参考:臨床検査からみた血栓症)。
若年者と言いましても、いろんな年齢層がありますが、小児科領域でも遭遇することのある疾患です。
今回のシリーズでは、小児科領域のAPSに言及しながら、記事を少しずつアップしていきたいと思います。
【抗リン脂質抗体症候群とは】
APSは、血栓症または妊娠合併症を臨床症状とする自己免疫性疾患です。
1986年にHughesらにより初めて提唱されましたが、現在では40歳以下の若年者における後天性血栓性素因の代表的な疾患として重要です。
APSの診断には、2006年に報告されたSapporo Criteriaを改定したAPS分類基準が用いられています。
Miyakis S, et al.: International consensus statement on an update of the classification criteria for definite antiphospholipid syndrome (APS). J Thromb Haemost 4: 295-306, 2006.
すなわち、(1)臨床所見として動静脈血栓症または妊娠合併症を少なくとも1つ認め、同時に(2)検査所見として少なくとも1つの抗リン脂質抗体(aPL)が12週間以上はなれて2度以上検出された場合に、APSと診断します。
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抗リン脂質抗体症候群の改定分類基準(2006年版)
以下の臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査所見の1項目以上が12週間以上の間隔をあけて
2回以上検出された場合を抗リン脂質抗体症候群(APS)と分類する
臨床所見
1.血栓症:画像検査や病理検査で確認できる1つ以上の動静脈血栓症(血管炎は除く)
2.妊娠合併症
(a) 妊娠10週以降の胎児奇形のない1回以上の子宮内胎児死亡
(b) 妊娠高血圧症、子癇もしくは胎盤機能不全などによる1回以上の妊娠34週未満の早産
(c) 妊娠10週未満の3回以上連続する原因不明習慣性流産
検査所見
1.ループスアンチコアグラント(LA)陽性(LAの測定は国際血栓止血学会のガイドラインに従う)
2.IgGまたはIgM型抗カルジオリピン抗体陽性:中等度以上の力価または健常人の99パーセンタイル以上
3.IgGまたはIgM型抗β2−グリコプロテインI抗体陽性:健常人の99パーセンタイル以上
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(続く)aCL、抗β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント:小児APS(2)へ
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 02:45| 血栓性疾患