血友病と創傷治癒遅延
血友病では止血機能に問題があります。
創傷時には出血を伴いますが、血友病のような止血機能の低下をきたす病態では、創傷治癒遅延にもつながっていくのでしょうか。
この点に関して、動物モデルを使用して検討した報告がありますので紹介させていただきます。
「血友病Bモデルにおける創傷治癒遅延」
著者名:Monroe DM, et al.
雑誌名:Thromb Res 125 Suppl 1: S74-S77, 2010.
<論文の要旨>
創傷治癒には、凝固、炎症、肉芽組織形成、組織再構成などの多数の生理的機序が含まれています。充分なトロンビン形成を伴う凝固活性化によってフィブリンが形成されることは、創傷治療に必要な条件です。
著者らは、凝固開始遅延(少ない組織因子発現)または凝固進展障害(血友病B)のあるマウスを用いて検討しました。
血友病Bマウスにおいては、皮膚の創傷治癒遅延がみられました(肉芽組織への出血を伴いました)。第IX因子製剤または遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の投与によって、トロンビン形成能は改善しました。
もしも、創傷治癒における凝固の意義が、安定した初期段階における血小板/フィブリン塊を形成することであるとしますと、創傷作成前に補充療法を行えば創傷治癒遅延は回復するはずですが、実験結果はこの仮説を否定しました。
また、少ない組織因子発現を示すマウスを用いた実験においても、創傷治癒遅延および肉芽組織内への出血がみられました。
以上、創傷治癒が正常に進行するためには、凝固因子製剤投与による一時的な是正ではなく、正常な凝固能が「持続する」ことが重要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25| 出血性疾患