遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病):鼻出血の治療
「遺伝性出血性毛細血管拡張;分子生物から臨床まで(その1)」からの続編です。
今回の記事では、鼻出血の管理にフォーカスを絞りたいと思います。
「遺伝性出血性毛細血管拡張;分子生物から臨床まで(その2)」
著者名:Dupuis-Girod S, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 8: 1447-1456, 2010. (その2)
<論文の要旨>
遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia ; HHT)(Rendu-Osler-Weber症候群とも言う)においては、脳動静脈奇形(AVM)5〜10%、鼻出血95%、肺動静脈奇形30%、消化管出血20%の頻度でみられます。
最も高頻度にみられる鼻出血の治療の要旨を記載したいと思います。
<HHTの鼻出血に対する治療>
1) 鼻出血の局所治療
圧迫、スポンジやゲルの止血素材、塞栓術、血管結紮、レーザー焼灼治療、硬化薬の使用、皮膚移植。ただし、これらの効果は不充分であるため内服治療薬の併用が試みられます。
2) エストロゲン/プロゲステロン製剤
(Van Cutsem E, et al ; J Clin Gastroenterol 10; 676-679, 1988)
有効例の報告がありますが、男性では行いにくく、50歳以上の閉経後の女性に対する使用は意見が分かれています。また、発癌性や心血管疾患の副作用に関する懸念があります。
欧州では頻用されています。血管新生を抑制するという症例報告があります。
4) 鉄欠乏性貧血の治療(鉄剤)
経口投与しにくい場合には、静注薬を用いることもあります。貧血の治療は重要です。
<補足>
HHTの診断基準;3項目以上で確診、2項目で疑診
1) 鼻出血;自然出血、再発性
2) 毛細血管拡張症;多発性、特徴的部位(顔面、口唇、口腔、指)
3) 内臓動静脈奇形(肺、脳、肝、脊髄)または胃腸粘膜の毛細血管拡張
4) 一親等以内の家族歴の存在
備考:endoglin gene やALK-1 geneなどの遺伝子解析により診断がより確実となります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48| 出血性疾患