金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年10月24日

後天性血友病と腎出血

血友病といえば、通常は先天性のものを言いますが、最近は後天性血友病が何かと話題です(参考:ノボセブン止血剤)。

管理人の経験からは、発症頻度も、従来言われてきらよりもずっと高いのではないかと思います。

今回紹介させていただく論文は、「臨床血液」に掲載された後天性血友病の症例報告です。

 

 

「腎出血による急性腎不全を合併した後天性血友病

著者名:瀧本円 他。
雑誌名:臨床血液 51: 407-412, 2010.


<論文の要旨>

 

症例は63歳女性。

2009年4月皮下・筋肉内出血、血尿が出現し、APTT 101.5秒、第VIII因子活性<1%、第VIII因子インヒビター14.1 Bethesda単位/ml(BU)を認め、後天性血友病と診断されました。

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)とprednisoloneによる治療を開始しましたが、第9病日に右側腹痛と血尿の増悪を認め、Cr 4.05mg/dl、BUN 71.5mg/dlと上昇し、腎出血による急性腎不全と診断されました。

APCC製剤への変更とステロイドパルス療法を併用し、腎不全は改善しました。

その後APCC製剤を中止し、免疫抑制剤の内服により抗体価は低下、第VIII因子活性は上昇しました。


後天性血友病で腎出血による急性腎不全を併発することは少なく、原因の多くは凝血塊による尿流出障害であるとされています。

しかし本症例は画像上、尿管からの出血は片側のみであり、腎実質・尿細管からの出血が原因と考えられました。

出血による致死率は高く、早期の診断と止血・免疫抑制療法の施行が重要です。


 

 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16| 出血性疾患