金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年01月02日

副作用とミニ移植:造血幹細胞移植入門(15)


造血幹細胞移植入門(インデックス)

 
表2-5


造血幹細胞移植入門

もともと内臓に障害がある、高齢、感染症を有しているなどの理由で、通常の強い前処置が実施できない場合、前処置を弱めた移植(骨髄非破壊的前処置同種造血幹細胞移植 = ミニ移植)を行うことがあります(上表)。

 

ミニ移植では、抗がん剤や放射線治療に伴う副作用が普通より軽く済むという利点があります。

一方、移植後もがん細胞がある程度残り、再発しやすくなる可能性があります。

ただし、同種造血幹細胞移植では、ドナーのリンパ球が患者のがん細胞を「異物」として認識し、免疫力でがん細胞を退治してしまう効果が期待できます。

これは「移植した血液による抗腫瘍効果(graft-versus-malignancy: GVM効果」と呼ばれています。

特に、「移植した血液による抗白血病効果」は「GVL (graft-versus-leukemia)効果」と呼ばれています。

そのため、骨髄非破壊的前処置を受けたからといって、再発しやすくなるとは一概に言えません。

なお、GVM効果がみられやすいがんとみられにくいがんがあります。

 

GVM効果が期待できるがんの代表は慢性骨髄性白血病です。

また、自家・同系造血幹細胞移植後にGVM効果は期待できないため、緩和的前処置後の自家・同系移植は通常行われません。

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 血液疾患(汎血球減少、移植他)