金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年02月09日

造血幹細胞(骨髄)の採取:造血幹細胞移植入門(31)


造血幹細胞移植入門(インデックス)


造血幹細胞移植入門:造血幹細胞(骨髄)の採取

移植用の骨髄は、全身麻酔をかけた上で、腸骨と呼ばれる腰の骨に針を繰り返し刺し注射器で吸い上げて採取されます。

骨髄採取量の目安は、患者の体重1 kgあたり15 mlです。

ただし、ドナーの体格やヘモグロビン値により、これより少なくなることがあります。

準備する自己血貯血量の目安は、予定の骨髄採取量から200-400 mlを引いた量(通常は200の倍数)です。


骨髄採取を開始した後、骨髄細胞数が十分にとれていないと判断された場合は、準備した自己血量プラス400 mlを超えない範囲で、採取する骨髄量を増やすことがあります。


たとえば、50 kgの患者に体重60 kgの健康なドナーから骨髄を採取する場合、予定の採取量は750 ml、準備する自己血量は400 ml、採取量の上限は800 mlになります。



同種骨髄移植で用いる骨髄は、原則として患者の移植と同じ日に採取します。

ドナーには、採取前健康診断、自己血貯血、麻酔科受診(病院によっては不要)、採取のための入院(通常4-5日程度)、採取後の健診が必要となります。

骨髄採取は、全身麻酔で行われるますので、全身麻酔の合併症が起こる危険性があります。

よくみられる副作用として、骨髄採取後腰の痛みが1−2週続くことがあります。

また麻酔中に気管や尿道に管を挿入するため、採取後に喉や尿道が痛むことがあります。

このような副作用は通常一時的なものです。

ただし、非常に稀ですが、後遺障害や死亡も含め重篤な副作用も報告されています(図は次回の記事になります)。


日本造血細胞移植学会. http://www.jshct.com/. 2010.

Miller JP, Perry EH, Price TH, et al. Recovery and safety profiles of marrow and PBSC donors: experience of the National Marrow Donor Program. Biol Blood Marrow Transplant. 2008;14:29-36.



骨髄採取に際しては、担当医から十分に説明を受け、納得した上でのぞむことが大切です。なお、ドナーを対象とした損害賠償保険があります。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11| 血液疾患(汎血球減少、移植他)