金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年02月10日

造血幹細胞(末梢血幹細胞)の採取:造血幹細胞移植入門(32)


造血幹細胞移植入門(インデックス)


造血幹細胞移植入門:造血幹細胞(末梢血幹細胞
)の採取

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を投与したのち、流血中の造血幹細胞が増えてきたころを見計らって、血球分離装置を用いて採取されます。

自家末梢血幹細胞の採取では、G-CSFの前に抗がん剤治療を受けることもあります。

血球分離装置は、成分献血で広く用いられています。

血球分離装置では、遠心分離により造血幹細胞が含まれる分画だけを効率よく分離・採取します。

これは「アフェレーシス」と呼ばれています。


十分に造血幹細胞が採取できなかった場合は、緊急に骨髄採取が計画されることもあります。

採取した造血幹細胞を含む血液はそのまま患者に輸血するか、あるいは凍結保存しておき、移植の直前に解凍し輸血(輸注)します。

ドナーには採取前健康診断、採取のための入院(通常1-7日程度)、採取後の健康診断が必要となります。


末梢血幹細胞採取では、G-CSFの使用や造血幹細胞採取に伴い副作用が起こる恐れがあります。

通常は一時的なものですが、非常に稀ながら、後遺障害や死亡例の報告もあります。


Miller JP, Perry EH, Price TH, et al. Recovery and safety profiles of marrow and PBSC donors: experience of the National Marrow Donor Program. Biol Blood Marrow Transplant. 2008;14:29-36.

Halter J, Kodera Y, Ispizua AU, et al. Severe events in donors after allogeneic hematopoietic stem cell donation. Haematologica. 2009;94:94-101.

Pulsipher MA, Chitphakdithai P, Miller JP, et al. Adverse events among 2408 unrelated donors of peripheral blood stem cells: results of a prospective trial from the National Marrow Donor Program. Blood. 2009;113:3604-3611.



末梢血幹細胞採取に際しては、担当医から十分に説明を受け、納得した上でのぞむことが大切です。

なお、末梢血幹細胞採取に関しても、ドナーを対象とした損害賠償保険があります。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| 血液疾患(汎血球減少、移植他)