金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年02月23日

網血小板(幼若血小板、IPF):造血幹細胞移植入門(41)



造血幹細胞移植入門:網血小板(幼若血小板、IPF)

骨髄から放出直後で細胞質がRNAに富む血小板は、網血小板(幼若血小板)と呼ばれます。


網血小板  reticulated platelet(幼若血小板  immature platelet)

・骨髄から放出直後の血小板
・細胞質内にRNAが豊富
・骨髄の血小板産生能を反映
・骨髄の巨核球数と相関
・自動血球分析装置で自動計測可能



網血小板は骨髄中巨核球数と相関し、骨髄での血小板産生能を反映します。

網血小板は従来フローサイトメトリー法で測定されていましたが、特殊技術が必要なため、一般への普及が遅れていました。

最近、汎用性に優れたXE IPF masterが開発され、網血小板は、幼若血小板比率(immature platelet fraction: IPF)として自動測定が可能となりました(幼若血小板比率(IPF)/網血小板)。


IPF測定は、以下での有用性が報告されています。

(1)特発性血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血、肝硬変といった血小板減少性疾患の鑑別診断。
(2)化学療法や造血細胞移植後の血小板回復予測、血小板輸血適応の判断。

Abe Y, Wada H, Tomatsu H, et al. A simple technique to determine thrombopoiesis level using immature platelet fraction (IPF). Thromb Res. 2006;118:463-469.

Briggs C, Kunka S, Hart D, Oguni S, Machin SJ. Assessment of an immature platelet fraction (IPF) in peripheral thrombocytopenia. Br J Haematol. 2004;126:93-99.



IPFは造血幹細胞移植後血小板造血能回復の指標にもなり、血小板数回復に先行して一過性に増加します(IPFサージ)(幼若血小板比率(IPF)/網血小板)。

Takami A, Shibayama M, Orito M, et al. Immature platelet fraction for prediction of platelet engraftment after allogeneic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant. 2007;39:501-507.


IPFサージは、好中球回復と同じ生着の時期にみられ、拒絶例ではIPFサージが起こらなかったことから、造血幹細胞生着の指標にもなる可能性が考えられています。

特にさい帯血移植は造血回復が遅く、生着不全も多いことから、IPFサージは心強いランドマークになると思われます。

IPFは、血小板輸血の必要性判断にも有用(幼若血小板比率(IPF)/網血小板)であり、網状赤血球数と同様、化学療法や造血幹細胞移植後の日常診療として測定すべき検査項目と考えられます。


参考:幼若血小板比率(IPF)/網血小板:インデックス



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56| 血液疾患(汎血球減少、移植他)