軽症血友病Aの診断
血友病は典型例では、関節内出血がみられますが、軽症血友病ではほとんど症状がみられません(同様のことがvon Willebrand病にも言えると思います)。
今回紹介させていただく論文も、観血的処置により偶然に血友病と診断されたという報告です。
「腰部硬膜外ブロックによる急性硬膜外血腫を契機に発見された軽症血友病A」
著者名:横田 昌 他.
雑誌名:臨床血液 52: 78-83, 2011.
<論文の要旨>
軽症血友病Aは、通常関節内出血などの重篤な出血症状をほとんど認めないため、偶然の受傷や手術時の止血異常で発見されることが多いです。
今回著者らが経験した症例も、腰部硬膜外ブロック後に発症した急性硬膜外血腫が発見の契機になっています。
出血症状を呈しながら、APTTやプロトロビン時間(PT)、出血時間が正常範囲内にあり診断に苦慮しましたが、TGTや第VIII因子活性値等の結果より診断が可能であった症例で、文献的考察を加えて報告しています。
症例は36歳男性です。
幼少時より軽度の出血傾向は自覚していましたが、重篤な出血の既往はありません。
腰椎椎間板ヘルニアによる疼痛に対して腰部硬膜外ブロックを施行後、急性硬膜外血腫による対麻痺と直腸膀胱障害が出現し入院となりました。
拡大開窓術と血腫除去術を施行しましたが出血が持続したため、止血目的で再手術を行いました。
第VIII因子抗原量138%に対し、活性は18%と低下しており、cross-reacting material positive (CRM+)軽症血友病Aと診断しました。
術後より第VIII因子製剤を輸注し、完全な止血を得ました。
活性化トロンボプラスチン時間(APTT)は正常でしたが、トロンビン生成試験(thrombin generation test ; TGT)においてendogenous thrombin potential (ETP)、 peak thrombin (Peak Th)は低値を示し、time to peak (ttPeak)は延長していました。
TGTは凝固機能の包括的な評価が可能であり、診断と治療に有用でした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02| 出血性疾患