金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年04月10日

移植後再発モニタリングの意義:造血幹細胞移植入門(58)


造血幹細胞移植入門(インデックス)

 

造血幹細胞移植入門:移植後再発モニタリングの意義

移植後再発は予防できない上、一旦再発すると治療は難しいです。

ただし、微小残存病変(minimal residual disease: MRD)で再発を発見すれば、DLIなど免疫療法の効果が得られやすいです。


MRD解析は、原則として、腫瘍細胞が有する分子マーカーのPCR法で行います(下表)。



MRDモニタリング法

方 法 検 出 感 度
染色体(細胞遺伝学的)検査 5%
FISH法 1%
フローサイトメトリー法 1%
フローサイトメトリー法(マルチパラメーター) 0.1%
PCR法(キメリズム解析) 1%
PCR法(変異遺伝子) 1%
PCR法(WT1) 0.1%
PCR法(融合遺伝子) 0.01%
PCR法(VDJ・TCR塩基配列特異的) 0.01%



さらに、染色体検査やフローサイトメトリー法なども組み合わせて評価します。

MRD検出感度を高めるため、腫瘍細胞分画(例えばCD34陽性)に濃縮してPCR解析しても良いです。

ただし、AML1-ETO融合遺伝子など一部の遺伝子解析は、感度が高まると疑陽性が増える恐れがあるので注意します。


適切な分子マーカーがなければ、MRDモニタリングはキメリズム解析で代用しますが、再発とホスト正常血液細胞回復を区別できないのが難点です。

しかし、混合キメラでは移植片対白血病効果が弱まり再発しやすくなるので、いずれにせよその時点で再発後治療の適応が考慮されます。

ただし、再発低リスクでは、免疫療法の毒性を考慮し、ドナーキメリズムの推移を見守ることもあります。





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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33| 血液疾患(汎血球減少、移植他)