金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2011年07月15日

後天性von Willebrand症候群とRituximab(リツキシマブ)

von Willebrand病と言えば、血友病とならんで有名な先天性出血性素因です。

しかし、最近は後天性von Willebrand病が話題になりやすいです。


今回紹介させていただく論文は、後天性von Willebrand症候群に対してRituximabが有効であった症例の報告です。

 

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「後天性von Willebrand症候群及びSjögren症候群を併発し、 Rituximabが有効であった胸腺原発MALTリンパ腫

著者名:岩渕多光子 他。
雑誌名:臨床血液 52: 210-215, 2011.


<論文の要旨>

53歳、女性。2007年、心窩部痛と背部痛にて来院しました。

胸部CT画像上、前縦隔に不均一な軟部種瘤陰影及び右肺に多発する結節を認め、拡大胸腺摘出術及び右肺部分切除を実施しました。

病理結果より胸腺原発MALTリンパ腫と診断されました。

同時期より眼内・口腔内乾燥感・持続する鼻出血が出現し、精査によりSjögren症候群及び後天性von Willebrand症候群(AVWS)と診断されました。

肺の残存病変に対しRituximabを投与したところ、病変の縮小とともにSjögren症候群及びAVWSの臨床的・血液学的検査値の軽快を認めました。

Sjögren症候群合併胸腺原発MALTリンパ腫はまれであり、かつAVWSの合併は報告がなく、貴重な症例です。

 

後天性von Willebrand症候群(AVWS)はこれまでに300程の報告例しかなく、まれな後天性の凝固異常症です。

断は、既往や家族歴がないにもかかわらず認められる出血症状とvon Willebrand因子活性の低下に基づく出血時間延長とAPTT延長からなされます。

基礎疾患を合併していることも多く、リンパ増殖性疾患(48%)、慢性骨髄増殖性疾患(15%)、悪性腫瘍(5%)、自己免疫疾患(2%)、心血管系疾患(21%)などが知られています。

発症機序は基礎疾患により異なり、リンパ増殖性疾患・自己免疫疾患では抗VWF抗体による特異的抑制、GPIb受容体への結合部位の被覆などによるクリアランスの亢進、悪性腫瘍では腫瘍細胞表面受容体による特異的・非特異的VWFの吸着、慢性骨髄増殖性疾患では高分子マルチマーの蛋白分解亢進による質的異常が病因論として考えらえています。

AVWSにおけるマルチマー解析では抗原・活性ともに認めないType 3様を示すものから、本例のように質的異常であるType 2a様を示すものが知られています。

 
 
 【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41| 出血性疾患