フサン(FUT)治療が有効なDIC症例
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合成プロテアーゼインヒビター(synthetic protease inhibitor:SPI)は、AT非依存性に抗トロンビン活性を発揮します。
代表的薬剤は、メシル酸ナファモスタット(NM:商品名フサン(FUT)など)および、メシル酸ガベキサート(GM)です。
出血の副作用が全く無いのは大きな魅力です。また、両薬は膵炎治療薬でもあり、膵炎合併例にも良い適応となります。
NMは臨床使用量で抗線溶活性も強力で、線溶亢進型DICに有効です(出血症状が前面に出るタイプのDICに対して相性が良いです)。
線溶亢進型DICに対してヘパリン類を投与しますと、かえって出血を助長させることがありますが、NMは線溶亢進型DICの出血症状に対してしばしば著効します。
< メシル酸ナファモスタット(フサン)が特に有効なDIC症例 >
1) 悪性腫瘍
・ 転移性前立腺癌:線溶亢進型DICとなります。
・ 転移性悪性黒色腫:線溶亢進型DICとなります。
・ 進行癌の一部:大腸癌、乳癌、胃癌、膵癌などの一部で、線溶亢進型DICとなります。
・ 血管関連悪性腫瘍:DICを合併すると、線溶亢進型となります。
2) 血管関連疾患
・ 胸部・腹部大動脈瘤:DICを合併すると、線溶亢進型となります。
・ 巨大血管腫:DICを合併すると、線溶亢進型となります。
3) 膵炎合併症例 :本薬は膵炎治療薬でもあります。
4) 敗血症、重症感染症:特に、出血の副作用のためヘパリン類(ヘパリン類の表)を使用しがたい症例で。
5) 外傷:外傷経過で線溶亢進型DICの時期において。
6) 急性白血病(線溶亢進型DIC):ただし、急性前骨髄球性白血病(APL)に対してATRA(ビタミンA誘導体)を使用している場合を除きます。APLでは、ATRAそのものがDIC治療効果を発揮します。
【備考】
メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン(FUT)など)は、DIC症例に対して広く処方されるが、特に上記疾患においては極めて相性が良いです。
現疾患が不変あるいは悪化するような場合ですら、DICに伴う出血はしばしば軽快します。
使用量は、標準的体重の方では、 200 mg/24時間程度となります。
高K血症の副作用には注意が必要です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36| DIC