米国International cough conference(金沢大学呼吸器内科)
国際学会参加の感想記事をアップさせていただきます。
「2011年 International cough symposiumnについて」
by 大倉徳幸(金沢大学呼吸器内科)
American international cough conferenceに出席しました。参加人数は120名程で、会場はニューヨーク・アフィーニアマンハッタンホテルで行われました。
国際学会としては決して大きな集会ではないですが、名前のとおり内容がすべて咳に関する演題ばかりであり、多くの国際的な咳の研究者が集うため、咳に興味がある者にとっては密度の濃い内容をもった学術集会です。この会は毎年ロンドンとニューヨークで交互に開かれます。
この会に参加するのは5年ぶりの2回目になります。ロンドンで初めて参加した時は、Discussionで司会者から質問されても内容を全く理解できなかった苦い記憶があります。
僕の研究テーマは、気管支平滑筋収縮と咳嗽反応の関係、咳喘息の咳嗽発症メカニズムについてです。藤村先生の御指導のもと、ちょうど5年前から始めた研究テーマであり、5年間のまとめとして自信を持って提示しようと臨みました。
未だ英会話には全くの自信はありませんでしたが。単身参加であり、顔見知りの日本人の先生方も何人かいらっしゃいましたが、基本的にアウェーでの発表です。
ところで欧米と日本の咳嗽に関するガイドラインにおいて、慢性乾性咳嗽に対する治療戦略は大きく異なります。
その大きな違いとして、日本では気管支拡張薬の効果を確認して咳喘息の診断治療となるのですが、欧米では気管支拡張薬の効果ではなく、気道過敏性の有無で咳喘息の診断を行います。
しかしながら気管支拡張薬が有効な咳嗽にもかかわらず、気道過敏性が正常な患者さんが存在することも事実です。また欧米のガイドラインでは、アトピー咳嗽の診断もできません。咳喘息の約30%が典型喘息に移行するといわれていますが、アトピー咳嗽はそうではありません。両者の鑑別は重要だと考えられます。
現段階で、この咳喘息の咳嗽発症メカニズムについての研究の結論としては、咳喘息の咳嗽発症機序は気管支平滑筋収縮における咳嗽過敏反応であるということです。つまり健常人では、軽度の気管支平滑筋収縮にておいても反応がない一方、咳喘息患者では軽度の気管支平滑筋収縮に対しても咳嗽反応が起こるということです。
一般的な気道過敏性検査では一定の気管支平滑筋収縮を起こすためのメサコリン閾値濃度を測定するので、この気管支平滑筋収縮における咳嗽の過敏反応と気道過敏性は一致しません。このような内容を発表しました。
会場からは方法に関する質問がいくつかあったものの活発な討論とまではいかず、残念なような、ほっとしたような気分でした。
それにしても欧米と疾患概念や治療戦略が異なる分野なんて非常に珍しいのではないでしょうか。異なった視点からの研究により、分かっていく真実があると思います。
内向きにならず、むしろ積極的に国際的な学会や紙上でdiscussionしていければいいなあと思いました。
そのためには英論文の発表と英会話の熟練が必要であると改めて感じた会でした。ニューヨークは大都会すぎて、学会としてはもう少し静かなところが良いような気がしますが、是非また行きたい所です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55| 呼吸器内科